(※画像はイメージです/PIXTA)

介護は高齢者自身にとっても、年老いた親を持つ子にとっても悩ましい問題です。介護がスタートする前から、介護費用等について家族で話し合い、解決策を用意しておくことが将来の介護を楽にするポイントです。年金や社会保障の問題解決に取り組んできた、FPで社会保険労務士の井戸美枝氏が解説します。※本記事は『残念な介護 楽になる介護』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

30代独身会社員の息子、両親の年金額に戦慄

【ケース】両親70代、息子30代独身、同居

 

M男さん(38)は1人っ子のおひとりさま。70代前半の両親と3人暮らしです。両親は自宅兼店舗で自営業を営んでいますが、そろそろ年齢的にも店じまいをしたいと思っていて、3人で今後の話をするようになりました。

 

M男さんは会社員なので、今までと変わらない日常を過ごせると思っていたのですが、店じまいをした後、両親の収入が少なくなることに気づき、愕然(がくぜん)としてしまいました。年金収入が2人合わせて10万円程度しかなかったのです。

 

両親は働いて得た収入を生活費にあててきましたが、これからはM男さんがある程度、養わなければなりません。就職してから少しは家にお金を入れていますが、両親を養うほどM男さんの月給は多くありません。今はまだ両親が健在だから安心ですが、どちらかが介護が必要になった場合、自分にどんな未来が待っているのか希望が持てず、結婚を考えるどころではなくなってしまいました。

介護に使える「親の資産」をチェックしよう

親が元気なうちは「まだ介護は必要ないだろう」と思い、無計画にお金を使ってしまいがちです。介護にかかるお金を計算する前に、親たちの資産を洗い出してもらいましょう。突然、お金の話を持ち出すと、「不謹慎だ」などと思われがちですが、病気で入院した際、親のキャッシュカードの暗証番号などを聞いておかなかったために、入院時にかかる一時金を子どもが立て替えた、というケースをよく聞きます。

 

何の対策もしないまま親(名義人)が亡くなった場合、家族が電話などで金融機関に名義人が死亡して相続が発生したことを伝える必要がありますが、即、口座は凍結されて家族であっても勝手に引き出すことができなくなります。また、口座や金融商品を解約するとき、相続人全員の承諾が必要になるので、手続きに時間がかかります。

 

さらに、残高がいくらあるのか把握するため金融機関に「残高証明の開示」や照会請求を行うと、金融機関が定める所定の手数料がかかります。休眠している銀行口座やほったらかしにしている株式などの金融商品があったら、元気なうちに解約して現金化し、1つの口座に集約してもらいましょう。

 

ノートを1冊用意して、口座番号、残高のほかに、キャッシュカードの暗証番号などを書いておくようにすると、そのまま「エンディングノート」として使えます。銀行の通帳や保険証書、有価証券などは、ノートと一緒に1つにまとめておきましょう。以下で、詳しく財産を管理する方法を説明します。

通帳を集約し、全財産を「見える化」する

複数金融機関に口座を開設していたら、できれば年金が振り込まれる金融機関の口座1本に絞って、ほかの口座は解約してもらいましょう。親本人も口座の存在を忘れてしまっていることが多いので、通帳が隠れていそうなところ、具体的には、たんす、鏡台の引き出し、仏壇の引き出しなどを入念に探してもらいましょう。

 

〈本人が銀行に出向くときに必要なもの〉

通帳・届出印・キャッシュカード・顔写真付き身分証明書(銀行によって異なる)など

 

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残念な介護 楽になる介護

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井戸 美枝

日本経済新聞出版

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