両親どちらかが亡くなった後の「遺族年金の額」は?
両親が健在でも、いずれはどちらかが先に亡くなります。夫婦のうち父親のほうが年上で母親は年下である場合が多く、男性よりも女性のほうが平均寿命が長いので、女性には「長生きリスク」がつきまといます。しかも、M男さんの両親はあまり年金問題に関心がなく、父が先に亡くなって母が1人になっても、「今までどおり2人分の年金が受け取れる」と勘違いをしていました。
父が亡くなったら、母は65歳以降、自分の老齢基礎年金しかもらえないということを最近知り、「1ヵ月4万円程度の年金収入で、どうやって暮らしたらいいのかしら」と心配するようになりました。そうはいっても、1人息子のM男さんが会社員だからなんとかしてくれるに違いないと思い、両親は商店街の旅行や友達とのカラオケ、買い物など自由気ままに過ごしています。
M男さんが両親に将来のことを考えるようにうながしても、「今まで一生懸命働いてきたんだから、これくらいいいじゃない」「お前にまかせる」などとのんきなことしか言わず、そのうち親子ゲンカに発展してしまいました。
片方の親が先立った後、どのような年金収入になるのか、残された親がもらえる年金をシミュレーションしてみましょう。
①父は自営業・母は専業主婦…2人とも国民年金加入者
父は40年間、国民年金に加入していたので、老齢基礎年金(年間約78万円)を受け取れます。一方、母は、国民年金に24年間しか加入していなかったので満額受け取れず、老齢基礎年金は約47万円となります。2人合わせて1年間の年金収入は約125万円。1ヵ月約10万円です。
もし父が先に亡くなり母が1人になったら、母は父の老齢基礎年金は受け取れません。国民年金からもらえる遺族給付には、「遺族基礎年金」「寡婦(かふ)年金」「死亡一時金」の3つがあります。遺族基礎年金は、18歳未満の子どもを持つ妻(夫)や、両親のいない18歳未満の子ども(両方亡くなった、または1人が離婚などでいなくなり、残ったほうが亡くなったなど)に支給されます。
遺族基礎年金は、被保険者(本人)が次の期間中に亡くなってることが受給要件です。
①国民年金に加入中(会社員なども加入しているので含まれる)
②かつて加入していて今は加入中ではないが、60歳以上65歳未満
③老齢基礎年金をもらっている
④老齢基礎年金の受給資格者(60歳以上65歳未満)
①②の人は保険料納付要件があります。死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの保険料を納付すべき期間のうち、3分の2以上が保険料納付済期間または保険料免除期間であること、また、保険料の滞納期間が3分の2を超えていない、といった条件です(2026年3月31日までは、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月まで直近の1年間の間に保険料の滞納がない、という特例になっています)。
ちなみに、子どものいる妻と子どもが遺族の場合、遺族基礎年金の給付額は次のとおりです。
基本額(妻)78万1700円
子どもの加算1人目と2人目 22万4900円、子どもの3人目 7万5000円
子どもが成人した夫婦の場合、どちらかが亡くなっても遺族基礎年金をもらえる資格はありません。寡婦年金(夫の老齢基礎年金の4分の3。妻が60歳から65歳の間)または死亡一時金(12万〜32万円。保険料を納めた期間による)のどちらかのみです。
65歳以降の母1人の1年間の年金収入は47万円になります。母が先に亡くなったら、父は死亡一時金と老齢基礎年金を受け取ることになります。40年間保険料を納めていれば老齢基礎年金は満額の約78万円がもらえます。
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