株式は早めに解約し、現金化したほうが無難
証券口座などに株式などを保有していないか、確認しておきましょう。大まかに資産状況を把握する、という目的以外に、親が不適切な投資をしていないかチェックするためです。元気なときに投資判断ができた人でも、認知機能が衰えてからの取引では問題が生じていることもあります。株式は早めに解約して、現金化しておいたほうが無難です。ネット証券の口座の場合は、ID・パスワードを確認して、解約手続きをしてもらいましょう。
〈本人が証券会社に出向くときに必要なもの〉
証券・届出印・顔写真付き身分証明書(証券会社によって異なる)など
加入している保険の情報を共有して「請求漏れ」を予防
親が加入している保険について、親子で情報を共有していると安心できます。亡くなったときに保険金が支払われる生命保険、入院したときや手術を受けたときに入院給付金・手術給付金などが受けられる医療保険、がん保険などさまざまな保険がありますが、いずれも保険会社に請求しなければ保険金・給付金は受け取れません。親(本人)が保険に入っていることを忘れていたり、身近な人が保険の存在を知らなかったりすれば、請求漏れをする可能性があります。
〈保険会社で保険金を請求するときに必要なもの〉
保険証書・届出印・身分証明書(保険会社によって異なる)など
高齢者には複数のクレジットカードを持たせない
先のM男さんは、母親から「通帳から1万円引き落とされているのだけど何のお金かわからない」と相談を受けました。通帳を見ると、クレジットカード会社の名前が書かれています。それはクレジットカードの年会費で、しかも、ゴールドカードでした。
よく買い物に行くスーパーマーケットで、「ポイントがたくさんつくから」などと店員のセールストークに乗せられて、クレジットカードを作っていたのです。買い物の際にポイントがついたり、優待セールで買い物ができたりするといった特典が魅力的でした。
年会費については、初年度は無料でしたが、2年目からは有料だったのです。カード会社によって規定があり、一定額以上カードを使わないと年会費が有料というケースもあります。カードを作っても、年会費の払い損になることがあるのです。
高齢者はキャッシング機能を悪用されて詐欺にあうリスクもあるので、クレジットカードは年会費無料のもの、使う頻度が高いものだけを残し、後は解約したほうが安心です。
M男さんは家の中からかき集めた通帳をノートなどに書きとめて、両親の金融財産がいくらあるのか把握しました。自宅は持ち家です。商売を整理しても借金はなく、貯金が3000万円程度あることがわかりました。それと同時に、両親がリタイア後にやりたいことを書き出して、できるかどうか話し合いました。
両親は廃業してから、自宅兼店舗を建て替えて、M男さんが結婚した後も同居ができるように2世帯住宅にしたいと思っていました。しかし、貯金が足りないので、店舗の部分を居間にするなどのリフォームにとどめることにしました。
◆親の資産のチェックリスト◆
▢ 預貯金額(金融機関名、キャッシュカードの有無)
▢ 月々の年金額
▢ 株式などの金融商品
▢ 持ち家などの不動産
▢ ローンや負債額
▢ 民間医療保険や生命保険
井戸 美枝
井戸美枝事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
社会保険労務士
産業カウンセラー
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