(※画像はイメージです/PIXTA)

老親の介護を自宅で行うのか、それとも施設への入所(入居)にするのか。子どもにとっては悩ましい問題です。労力や資金力を中心とするのではなく、本人の希望に近づけることが望ましいといえます。※本記事は長年に渡り介護事業の運営・マネジメントに携わってきた福岡浩氏の著書『プロの調査員が教える! 介護事業所・施設の選び方が本当にわかる本』(自由国民社)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅生活の継続可否は、本人を取り巻く状況で変化する

●家族の介護力と周囲のサポート力

 

要介護状態にある高齢者が在宅生活を続けられるかどうかは、本人を取り巻くその時々の状況によって大きく変わります。単に家族の介護力だけが大きな問題とも言えません。介護力を人的労力や金銭的な余力で判断するのではなく、本人が望む在宅生活もしくは施設生活を実現する力と考えましょう。

 

労力も金銭的余力も必要ですが、それ以上に本人が希望する生活に近づけるためには、様々な情報も必要です。具体的には、在宅生活を続けるために何が必要で、それはどこにあり、本人の希望にふさわしいものなのか、そうした視点で正確な情報を集めることが大切です。

 

介護保険には、利用する目的によって多種多様なサービスがあります。また、地域には介護保険以外の便利で役に立つ福祉サービスもあるでしょう。しかし、家族による情報収集には限界があります。そこで、信頼できるケアマネジャーの存在が大きいと言えます。

 

●地域包括支援センター

 

要介護高齢者を支える仕組みとして、前述の「地域包括ケアシステム」があります。その要になるのが、地域包括支援センターです。

 

同センターには、社会福祉士、保健師(または看護師)、主任介護支援専門員(経験5年以上のケアマネジャーが取得できる資格者)などがいます。気軽に様々な相談ができます。

 

同センターの機能の1つに「総合相談支援業務」があり、高齢者の日常生活に関わる悩みや相談に対応しています。もちろん、介護についての相談にも応じていますので、家族や近隣の方々が最寄りの地域包括支援センターを活用することも広い意味で介護力と言えます。

 

周囲のサポートとしては、最も身近な民生委員の存在があります。民生委員が定期的に集まり、地域に関する情報交換を行っていますので、何かしらのサポートができるはずです。

 

出所:厚生労働省資料

[図表2]地域包括支援センターの業務出所:厚生労働省資料

 

●福祉サービスや地域の社会インフラなど

 

1人暮らしの高齢者が要介護状態になったら、すぐに施設入所だと考える人が多いですが、本人が在宅生活を続ける意思があれば、その方法は必ず見つかります。介護保険のサービスだけではなく、地域には、要介護状態の人のために様々なサービスがあるはずです。介護を必要としていない人には気が付かないものや、市区町村が独自に提供しているサービスもあります。

 

記事の末尾にまとめた「介護保険以外の高齢者福祉サービスの例」は、地方自治体が提供している介護保険外のサービス例です。どちらの市区町村でも同様の福祉サービスがありますが、地域の特徴やニーズによって、提供するサービスに違いがありますので、最寄りの市役所、区役所等に問い合わせ、配布されているパンフレットなどで確認しましょう。

 

●入所系サービスと居住系サービスの違い

 

要介護状態になって、本人の希望で在宅生活を続けていても、施設入所を検討せざるを得ない時期が来るかもしれません。下図のように、施設には「入所する」という「施設系サービス」と、施設と同じような建物で「入居する」という「居住系サービス」があります。

 

このうち、「サービス付き高齢者向け住宅」だけが介護保険外で国土交通省の所管です。一般的には「サ高住」と呼ばれています。明らかに名称が「住宅」ですから、賃貸住宅に近いものです。

 

入所と入居の違いは、要介護度とも関係している点があります。居住系サービスのホームや住宅に入居する要介護高齢者は、比較的要介護度が低い1.2程度の人が多く、中重度の3~5の人は、施設系サービスの施設に入所するという理解でも差し支えないでしょう。

 

もちろん、例外もあります。グループホームの入居者が認知症以外の疾患があり、重度化した時は、退居を求められる場合もあれば、最期の看取りまで行われる場合もあります。

 

また、入所の対象となる「施設系サービス」では、近年、医療的対応の必要性が高まり、法改正、介護報酬改定を通じて医師の配置を促進しています。

 

 施設系サービスと居住系サービス 

 

【施設系】

★介護老人福祉施設(介護保険)

★介護老人保健施設(介護保険)

★介護医療院(介護保険)

★介護療養型医療施設(介護保険)

 

【居住系】

★ 認知症対応型共同生活介護(介護保険)

★ 特定施設入居者生活介護(介護保険)

★ サービス付き高齢者向け住宅(介護保険外)

 

 介護保険以外の高齢者福祉サービスの例 

 

★緊急通報装置のレンタル

65歳以上の1人暮らしまたは寝たきりの人などを対象に、急病や災害の時にすぐに通報できる緊急通報装置を貸与する。

 

★日常生活用具の給付

65歳以上の1人暮らしまたは寝たきりの人などを対象に、火災警報器、自動消火器、電磁調理器、マットレス、入浴補助具、シルバーカーなどを給付する。

 

★紙おむつの給付

65歳以上で要介護1~5の人に、紙おむつを支給する。

 

★配食サービス

65歳以上の1人暮らしや65歳以上のみの世帯を訪問して栄養のバランスのとれた食事を配送するとともに、安否確認を行う。

 

★訪問理美容サービス

65歳以上で要介護4・5などの人の自宅に、理容師・美容師が出張して調髪やカットを行う。

 

★外出支援サービス

65歳以上の要介護または要支援の認定者で、他の交通機関の利用が困難な人を対象に、リフト付き専用車両などで送迎を行う。

 

★訪問歯科診療

通院が困難な高齢者を対象に、自宅を訪問して歯科診療(保険診療)を行う。

 

★定期訪問

65歳以上の虚弱な1人暮らしの人(近所に親族等がいないこと)に民生委員が定期訪問し、安否確認や日常生活の相談を受ける。

 

★寝具乾燥サービス

65歳以上の1人暮らしや65歳以上のみの世帯で、住宅事情などで寝具の乾燥が困難な人に、寝具の乾燥サービスを行う。

 

※ 各市区町村では類似のサービスを行っている場合が多い。所得制限や利用条件などが異なるので確認すること。

 

 

福岡 浩

介護業務運営・業務改善コンサルタント

元介護サービス情報の公表制度主任調査員

 

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