施設入所で状態が悪化するケースも少なくない
厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)」によると、高齢者の介護が必要となった原因として、「骨折・転倒」は、「認知症」(第1位)、「脳血管疾患」(第2位)、「高齢による衰弱」(第3位)に次いで、4番目に多い原因となっています。
転倒・骨折は戸外よりも主に家の中や入所中の施設内で起きていています。介護施設にいれば安心だと思っている人もいますが、必ずしもそうではありません。介護職員の介助を受けずに、自分で立ち上がろうとしたり、起き上がろうとして転倒するケースもあります。
●転倒・骨折して病院から有料ホーム入居へ
筆者の知人のお父様の例をご紹介します。
転倒し大腿骨の骨折で入院し、手術後にリハビリテーションを受けながら回復を目指しますが、1人暮らしだったので、退院後に家に戻れませんでした。
そこで、長女が半ば強引に介護施設や有料老人ホームの入所、入居をあっせんしている業者を通じて、父親を有料老人ホーム(以下、「ホーム」)に入居させました。入居後、急速に要介護状態が重度化し、認知症を発症し寝たきりになりました。
★人手が掛けられない介護現場
介護現場で慢性的な介護職員不足が続いていることはすでにご承知のとおりです。人手不足は安価なホームほど厳しい傾向があります。そうしたホームでは、ギリギリの介護職員や看護職員で運営しているので、入居者の介護に満足な時間を割けません。
結果的に入居者は室内にいる時間が長くなり、足腰の筋力を回復させるようなリハビリテーションを行うこともなく、徐々に歩行器使用でも歩けなくなり、立ち上がることすらできなくなります。自ずとベッドに寝たきりになります。
少ない介護職員で寝たきりになった人を介護するのは、1日数回のおむつ交換、食事介助、そして週2回の入浴介助になります。この状況になってしまうと、認知症も発症していたので、昼夜逆転、食事量も減り、衰弱してホーム入居から1年半ほどで亡くなりました。
入居後半年頃に筆者がホームを訪ねようと思い、電話をした時は、お父様も意志疎通ができていましたが、そのわずか1年後に訃報を聞きました。
●杖歩行の軽度者が家族の都合で短期入所へ
一般的に「ショートステイ」と言われているのは、短期入所生活介護と短期入所療養介護です。前者は軽度な要介護者が一時的に短期間入所する施設で、特別養護老人ホームなどに併設されています。
家族が親戚の冠婚葬祭などで数日間家を空けなくてはならない時などに、要介護者を一時的に入所させます。このような事例はよくありますが、杖を使って歩けていた軽度の要介護者が10日余りで車椅子に乗って帰ってくることは決して珍しくはありません。
では、なぜ杖歩行の軽度要介護者が車椅子を利用するようになってしまうのでしょうか。
短期入所と言っても施設入所と同じですから、介護職員が常時介護しているわけではなく、杖を使って自力で歩行できるとしても、万が一施設内で転倒し骨折したら、施設の責任だと言われかねません。
そう考えると、転倒のリスクを回避するためにどうするか、短期入所でも入所中は車椅子を使って移動してくださいという施設があります。
●安静状態が長く続くと身体機能は低下する
わずか1週間でもベッド上で安静状態を続ければ、筋力は10~15%低下すると言われています。移動はすべて車椅子ですから、身体は楽です。10日間車椅子生活を続けると、杖歩行が不安に感じられても不思議ではありません。
退所する時に、施設の担当者は、「転倒すると困るので、車椅子を使っていました。」と、家族に伝えます。事前にそんなことは聞いていないと思っても「安全のために」とか、「転倒する恐れがあるので」と言われると、妙に納得してしまいます。
かくして、杖歩行できていた軽度な要介護者は、10日間の短期入所生活介護を利用している間に車椅子生活に慣れて帰ることになったわけです。
もちろん、その後、間を空けずにリハビリテーション等を行えば、元に戻すこともできるでしょうが、本人には辛いリハビリになるかもしれません。
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