新興国に見られる金融引締めの背景と今後 (※写真はイメージです/PIXTA)

主な新興国の年初からこれまでの金融政策を振り返ります。2月にロシア、3月にブラジルが利上げを開始したのに続き他の新興国でも利上げ、もしくは据置であっても将来の利上げを示唆する国が見られるようになりました。地域的にはメキシコやチリなど南米の一部とハンガリーなどとなっています。インフレ率上昇、もしくは通貨安が引締めの要因と見られます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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新興国金融政策:インフレ率上昇などを背景に主な新興国中銀は引締め傾向

ロシア中央銀行は2021年7月23日に金融政策決定会合を開催することが予定されています。ロシアの政策金利は現在5.50%ですが(図表1参照)、市場では23日の会合で6.5%へと1.0%の大幅な引き上げが予想されています。

 

出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]主な新興国の金融政策(21年6月~7月) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

また、ブラジル中央銀行の次回の金融政策決定会合は8月4日(公表は日本時間5日)が予定されています。これまで3会合連続で0.75%の利上げを実施し、今年に入ってからの利上げ幅は合計で2.25%となっています。物価上昇が続いていることから、金融引き締めを余儀なくされています。市場では再度の利上げが予想されています。

どこに注目すべきか:新興国、利上げ、インフレ目標、デルタ変異株

主な新興国の年初からこれまでの金融政策を振り返ります。2月にロシア、3月にブラジルが利上げを開始したのに続き他の新興国でも利上げ、もしくは据置であっても将来の利上げを示唆する国が見られるようになりました。地域的にはメキシコやチリなど南米の一部とハンガリーなどとなっています。インフレ率上昇、もしくは通貨安が引締めの要因と見られます。

 

まず、利上げで先行したロシアやブラジルを例にインフレ率の状況を確認します。ロシアの消費者物価指数(CPI)は6月が前年同月比6.5%とインフレ目標の4%を上回っています。ブラジルの消費者物価指数(IPCA)は6月が同8.35%とインフレ目標の3.75%(中央値)を大幅に上回っています。ブラジル中銀が毎回0.75%と大幅な利上げを継続しているのももっともなことと思われます。

 

東欧ではハンガリーが6月に利上げをしました。ハンガリーのインフレ率は過去数年3%前後で推移していました。しかし6月のCPIは前年同月比で5.3%とインフレ目標(3%)を大幅に超えています。近隣のポーランドも6月のCPIが同4.4%と上昇傾向です。しかし、7月9日の金融政策決定会合でポーランド中銀は政策金利を0.1%で据置きました。新型コロナウイルスの影響で経済の回復が遅れる中では、ポーランドに限らず、利上げは先送りしたいところでしょう。

 

なお、政治の介入で独特の金融政策となっていたトルコですが、前トルコ中銀総裁の更迭によるリラ安を受け、19%の高い政策金利を維持しています(図表2参照)。であるならば、解任の必要があったのか疑問は残ります。

 

日次、期間:2020年7月20日~2021年7月20日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]トルコリラ(対ドル)の推移 日次、期間:2020年7月20日~2021年7月20日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

一方、アジアではインフレ率はインドのような例外はありますが全般に低水準で政策金利を据置く国が多く見られます。例えば、インドネシアのインフレ率は4%とやや高めながらフィリピン中銀は当面据置きを示唆しています。なお、マレーシアやインドネシアではデルタ変異株の感染拡大が景気に影響を与えています。

 

ただ、マレーシアはインフレ率が4.4%と相対的にアジアの中では高く、マレーシアの通貨安も進行していることから、緩和に踏み込みにくい状況です。そうした中、輸出に強みを持つ韓国に利上げの兆しが見られました。

 

インフレ率上昇もしくは通貨安の抑制などを背景に新興国の一部に引締めが見られましたが、21年前半は経済成長率が高かったことも引締めに向かわせた要因と思われます。ただ、米国や中国の景気回復は21年前半がピークであった可能性もあります。新興国には景気がやや減速する中での政策運営が求められそうで、各国の今後の対応に注目しています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新興国に見られる金融引締めの背景と今後』を参照)。

 

(2021年7月21日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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