(※写真はイメージです/PIXTA)

欧州中央銀行(ECB)が今回の理事会で示した政策金利に関するフォワードガイダンスは、先日のECBの戦略検証で示された上下対称的な2%のインフレ率を目指すとの目標を反映しています。例えば、インフレ目標は2%未満から2%へと変更されました。なお、フォワードガイダンスには緩和姿勢を強めた表現も見られ、ECBのハト派(金融緩和を選好)姿勢が浮き彫りになりました。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

インデックスファンドより高いリターンを狙う!
「アクティブファンド特集」を見る

欧州中央銀行:8日の金融政策の戦略検証を反映しフォワードガイダンスを変更

欧州中央銀行(ECB)は2021年7月22日に開催した政策理事会で、金融政策の先行き方針(フォワードガイダンス)のうち政策金利に関連する部分のみを変更しました。

 

フォワードガイダンスの要旨は、インフレ率が①2%目標に予測期間終了のかなり前に到達し、②その後の予測期間においても、残る予測期間中も安定的にこれを維持すると予想され、③中期的に2%のインフレと整合する形で十分に進むと判断されるまで、政策金利が現状かそれよりも低い水準にとどまると予想する(①~③は筆者)、となっています。

どこに注目すべきか:戦略検証、フォワードガイダンス、貯蓄率

欧州中央銀行(ECB)が今回の理事会で示した政策金利に関するフォワードガイダンスは、先日のECBの戦略検証で示された上下対称的な2%のインフレ率を目指すとの目標を反映しています。例えば、インフレ目標は2%未満から2%へと変更されました。なお、フォワードガイダンスには緩和姿勢を強めた表現も見られ、ECBのハト派(金融緩和を選好)姿勢が浮き彫りになりました。

 

まず、上記のフォワードガイダンス要旨を整理し、政策金利の今後を占います。フォワードガイダンスの①では、予測期間終了のかなり前に、2%に到達することが政策金利変更の条件(の1つ)と説明されています。予測期間終了はECBスタッフが公表する経済予測を前提に、現在であれば23年末と見られます(図表1参照)。

 

予測時点は21年3月(前回)と6月(今回) 出所:ECBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ECBスタッフによるインフレ率予測の推移 予測時点は21年3月(前回)と6月(今回)
出所:ECBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、ラガルド総裁は会見で予測期間終了のかなり前とは予測期間の中間点と説明しました。概ね22年秋が該当すると思われます。図表1にあるように、22年のECBスタッフによるインフレ率予想は1.5%でインフレ目標には届かないことが見込まれています。

 

ただ、だからといって予測期間の中間点でたまたまインフレ率が2%と予想されただけでは利上げの条件を満たさないでしょう。②や③にあるように、残る予測期間中もインフレ率が安定的に維持されると予想され、さらに基調的インフレの動向が2%の目標と整合的と判断されることも求められているからです。一過性のインフレ率の上昇だけは、政策金利変更の条件にはなりえないと見て良さそうです。

 

ここでユーロ圏の足元6月のインフレ率は前年同月比で1.9%と、インフレ目標に迫る水準です。加えて、ユーロ圏の家計の貯蓄率(可処分所得に対する貯蓄の割合)を見ると、今年1-3月期は約21.5%と高水準です(図表2参照)。新型コロナウイルスへの手厚い財政政策による支援や、サービス消費などの機会減少を受け、あたかも強制的にお金が貯蓄に回った(強制貯蓄)ことが貯蓄率急上昇の背景です。

 

四半期、期間:2011年1-3月期~2021年1-3月期 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ユーロ圏の(グロス)貯蓄率の推移 四半期、期間:2011年1-3月期~2021年1-3月期
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

仮に、この巨額の貯蓄が一気に消費に回ったら、許容できないインフレ率上昇のリスクがあると懸念する市場関係者も多く見られます。ワクチン接種の進展などに伴い、経済活動の制限が緩和されると消費が活発化することは見込まれます。ECBのモデルの想定では貯蓄率は緩やかにパンデミック前の状況に低下することが見込まれており、急速な貯蓄率の低下はメインシナリオではないようです。背景として、貯蓄の分布が消費性向の低い(お金があってもあまり使わない)高所得者に偏っている点を指摘しています。高所得者は貯蓄を投資に振り向ける動きを想定しています。また、巨額の財政政策の後だけに、今後の増税に備えて貯蓄を維持する動きも想定されています。ただし、新型コロナへの政策対応は過去に例の無い事例だけに予想の不確実性は他のケースと比較にならないほど大きく、今後の展開への注視の必要性も高そうです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECB、戦略検証を受けたフォワードガイダンス変更』を参照)。

 

(2021年7月27日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

\PR/ 年間延べ7000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【3/27開催】遺言はどう書く?どう読む?
弁護士が解説する「遺言」セミナー<実務編>

 

【3/27開催】いま「日本の不動産」が世界から注目される理由
~海外投資家は何に価値を見出すのか

 

【3/27開催】「マイクロ法人」超活用術
~法人だからできる節税とは~

 

【3/28開催】「相続手続き」完全マスター講座
~相続人調査、財産調査、遺産分割協議~

 

【3/30開催】次世代のオルタナティブ投資
「プライベートクレジット投資」とは

あなたにオススメのセミナー

    【ご注意】
    ●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
    ●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
    ●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
    ●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
    ●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
    ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
    ●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
    ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
    ●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    TOPへ