「人生100年時代」といわれています。定年後の避けては通れない課題は「お金」「健康」「生きがい」です。老後の資産を守る一番の方法は、認知症にならないこと。そうはいっても、5人に1人は認知症を発症する時代です。自己管理だけでは完全に防ぎきれません。万が一、認知症になっても、資産を有効に管理するにはどうしたらいいのでしょうか。本連載は長尾義弘・福岡武彦著『定年の教科書 お金 健康 生きがい』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。
各自のケースでメリット、デメリットがある
●「金銭信託」は信託銀行がおこなう
金銭信託は、個人や法人の財産を信託して、信託銀行などがその信託財産を運用管理する金融商品です。信託とは、土地や金銭の管理運用を信頼できる人に託すことを意味します。
「信託銀行って何? 普通の銀行と違うの?」と、戸惑う人もいるかもしれませんね。信託銀行は、銀行業務の他に信託業務をおこなう金融機関のことです。
代表的な信託商品としては、「教育資金贈与信託」「遺言代用信託」などがあげられます。
その他、障害をもった子どものための「特定贈与信託」、後見制度を利用した場合の「後見制度支援信託」、社会のために何かをしたい人向けの「特定寄付信託」など、さまざま商品があります。
また、新しいサービスとして、認知症に対応した信託商品も登場しています。信託銀行に支払う報酬を確認しながら検討してみてはいかがでしょうか。
●「民事信託(家族信託)」の特徴は?
信託銀行などがおこなう信託以外を「民事信託」と呼んでいます。また「家族信託」と呼ぶこともあります。
民事信託は、資産の所有者(委託者)、資産を託される人(受託者)、託された資産から利益を得る人(受益者)の3者で契約を結ぶのが基本です。
認知症になる前に契約書を作っておけば、発症後の財産管理、死後の財産管理もできるようになります。契約書の作成や手続きは、司法書士や弁護士などをとおしておこないます。成年後見制度では難しかった、柔軟な資産管理ができます。
成年後見制度、金銭信託、民事信託と3つの方法を紹介しましたが、各自のケースで向き不向きがあります。それぞれのメリット・デメリットもきちんと理解しながら、じょうずな使い分けが必要です。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員
福岡 武彦
1株式会社ライフエレメンツ代表取締役
税理士
NEO企画
代表
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員
徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな! 』(河出書房新社)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』『定年後の手続きガイド』など多数。
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連載定年後は余生ではない…愉しい老後ライフを手に入れる心構えと知恵
株式会社ライフエレメンツ代表取締役
税理士
大前研一氏が設立した起業家・アントレプレナー育成学校アタッカーズ・ビジネススクールを経て、以来30年以上にわたってアントレプレナー支援、インバウンド税務会計に携わっている。大手監査法人KPMGの金融・国際取引税務部、米国海外勤務、外資金融企業勤務を経て三聖トラスト会計事務所を設立。法人向けサービスとして、各分野の辛口の専門家をタレント化するプロダクション部を設ける。また、福利厚生や社員研修の一環として、オンデマンド研修、ビデオコンテンツ制作等をおこなうWEBライブイルミネーター事業を展開している。
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