不動産の担保価値が高額な融資を可能にする
さて、融資を受ける際にもっとも気になるのが「いくら借りられるのか」だと思います。せっかく理想的な物件に出会えても、十分な融資が受けられなければ購入することはできません。
成功事例では、最高で10億円もの融資を受けている方がいらっしゃいました。その他の方々も、みなさん数億円もの融資を受けています。個人の属性や購入する物件の価値によりますが、これほどの融資を受けられる投資はそうそうないでしょう。
では、不動産投資の世界では、なぜそれほど高額な融資を受けることができるのでしょうか? その答えは、不動産の「担保価値」にあります。
不動産は非常に安定性の高い資産です。景気に左右されることなく、一定の家賃収入が継続的に発生します。そのため、不動産自体の担保価値が金融市場で認められているのです。
万が一、返済が滞った場合も、金融機関は、ほぼ確実にローンを回収することができます。何らかの事情で返済が困難になった場合、購入者は担保となっている不動産を手放すことになります。すると金融機関は不動産を競売にかけ、落札額でローンを回収することができるのです。
金融機関は損をしないローン価格を算出している
ここで気になるのが、「不動産の価値は変動するのでは?」ということでしょう。確かに、回収したい金額以下で落札されると金融機関は損をしてしまいます。
しかし、金融機関は不測の事態に備えてあらかじめ手を打っています。それが「積算評価」と「収益還元法」という不動産の評価方法です。
◆積算評価
一定のルールで土地と建物の現在価値を求める評価方法です。次のような式で土地と建物の評価額をそれぞれ算出し、合計した金額が積算価格となります。
•土地の評価額=前面の路線価×土地の面積(㎡)
•建物の評価額=建物の延べ床面積(㎡)×再調達価格×(残存年数/法定耐用年数)
再調達価格とは、「その構造の建物を今建てたとしたら、1㎡でどれくらいの費用がかかるのか」を想定した単価です。価格は金融機関がそれぞれ独自に設定していますが、木造15万円、軽量鉄骨造13〜15万円、鉄骨造17万円、RC造(鉄筋コンクリート造)20万円程度が大まかな目安です。
また、耐用年数は税務署が定めた減価償却の年数です。木造22年、軽量鉄骨造19年、S造(鉄骨造、重量鉄骨造)34年、RC造47年、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)47年が住宅として使用する場合の基準です。こちらに関しても金融機関独自の基準を設けていることがありますので、あくまでも目安としてお考えください。
このようにして積算評価が算出され、ローン金額の検証が行われます。積算評価を超えるローンは出さないと決めている金融機関もあるため、なるべく優良な物件を手に入れることが融資のポイントになります。
◆収益還元法
もう一つの評価方法が、収益還元法です。不動産が将来生み出すであろう家賃収入の現在価値の総和を求め、不動産の収益価格を算出します。
収益還元法には、「直接還元法」と「DCF法」という2つの方法があります。DCF法は主に不動産を証券化する際に利用される複雑な方法ですので、本連載では直接還元法のみを取り上げます。
直接還元法は、一定期間(通常は1年間)の家賃収入÷還元利回り×100で収益還元価格を求める方法です。
還元利回りは収益価格を求めるために独自に定められた利回りで、各金融機関のトップシークレットとなっています。なぜなら、収益還元価格は還元利回り次第でガラリと変わるからです。
例えば年間の家賃収入が120万円、年間の諸経費が20万円、還元利回りが5%だったとします。これを先ほどの式に当てはめると(120万円―20万円)÷5×100で、収益還元価格は2000万円になります。
これを還元利回り6%で計算すると、収益還元価格は1670万円。1%違うだけで、結果が大きく異なるのです。
多くの金融機関は積算評価と直接還元法によって、不動産の価値を判断します。そして、その結果に応じて「損をしない」ローン価格を算出するのです。
ちなみに、多くの金融機関は収益還元評価よりも積算評価を重視しています。収益よりも物件自体の価値を基準にした方が、ローンを回収できる確率が高いからだと考えられます。
ただ、だからといって積算評価がいい物件に飛びつく必要はありません。確かに融資は受けやすいかもしれませんが、未来のことは誰にも分からないからです。
どんなに積算評価が良くても、キャッシュフローが小さい物件では返済が困難になってしまいます。そんな状態を続けていては、近い将来物件を売却する可能性も高くなるでしょう。想定通りの価格で売却できればいいですが、積算評価はあくまでも現時点での目安です。
つまり、実際にいくらで売れるかは分からないのです。ですから筆者は、少なくとも最初の物件を購入する際は「キャッシュフロー重視」で選ぶべきだと考えています。