重要事項説明を受ける際には「主任者証」を確認
Q:不動産売買契約を結ぶとき、注意すべきポイントはありますか?
まず不動産売買契約は、重要事項説明と契約書の説明を受けてから締結するのが基本です。
重要事項説明は、「宅地建物取引士」が説明することになっています。ここで注意すべきなのが、主任者証を提示したかどうかです。資格者以外が説明するのは宅建業法違反ですから、業者の信頼性が疑われます。万が一、主任者証を提示しない場合は、契約に進むことのないよう注意してください。
続いて、「重要事項説明書」の記載事項について注意すべき点をまとめます。
◆都市計画
日本の土地は、大きく「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引き区域」に分かれています。
代表的な投資対象は「市街化区域」にある物件ですが、「市街化調整区域」「非線引き区域」の物件も稼働が見込めれば検討できます。区域によっては制限が厳しいこともありますので、書面で再確認しておきましょう。
◆敷地と道路との関係
道路条件によっては建築が制限されるケースもあるため、注意が必要です。
◆瑕疵担保責任
建物に瑕疵(欠陥)が隠れていた場合、どのように対処すべきかを決る事項です。
売主が業者の場合は、最低2年間の瑕疵担保責任が生じます。簡単にご説明すると、「購入から2年以内に不動産売買契約時には発覚していなかった瑕疵が見つかった場合、売主が修繕工事の義務を負う」ということです。この場合、費用は全額売主負担になります。瑕疵によって著しく損益を被った場合、買い戻しの請求ができることも覚えておいてください。
また、売主が業者で買主が一般の方の場合は、書面に「瑕疵担保責任免責」(瑕疵担保責任を負わない)という特約が入っていても無効になります。業者が特約を盾に瑕疵担保責任を免れようとした場合は、追及していいでしょう。
一般の方が売主の場合は、原則として瑕疵担保期間は自由に決められます。この場合は3~6カ月程度が上限だと思いますが、瑕疵担保責任免責も有効になります。最近はこのパターンが多く、書面に瑕疵担保責任免責の特約が入っていることも少なくありません。特約の効力を判断するためにも、売主の属性はきちんと把握しておきましょう。
不動産売買契約書と重要事項説明書の差異をチェック
◆融資利用の特約による解除
「ローン特約」とも呼ばれる、非常に重要な項目です。簡単に言うと、「融資が受けられなかった場合は契約を白紙に戻す」という条件です(不動産売買契約時はまだ融資が下りていません)。
融資を利用して物件を購入する場合は、絶対にローン特約を付けるべきです。ローン特約がない状態で、万が一、融資の承認が得られず契約解除の際には、売主に預けた手付金が返還されないからです。
手付金は物件価格の10%程度ですから、1億円の物件なら1000万円も損をすることになります。一方、ローン特約が付いていれば無利息で全額返還されるので安心というわけです。ただ、中にはローン特約を嫌う売主もいます。そのため交渉が難しい項目ではありますが、可能な限り粘ったほうがいいでしょう。
◆引き渡し前の滅失による解除(危険負担)
こちらも非常に大事な項目です。物件の引き渡し前に自然災害(落雷、地震、津波など)によって建物が壊れたりなくなったりした場合、どのように対処すべきかが事前に決められています。有効期間は、不動産売買契約から決済までの期間です。
売主が所有権を保有している期間ですから、修繕工事を行うのが売主であることを確認しておきましょう。多額の工事費が必要と認められる場合は、契約が白紙解除されるのが一般的です。
◆契約解除に関する事項
不動産売買契約では、売主と買主の双方に義務が発生します。売主は完全に所有権を移譲し、買主は契約で決められた代金を支払わなければいけません。
しかし、決済日までにそれぞれの義務を履行できないことがあります。その場合は、一定の催告期間を設けて契約を解除できるのと同時に、違約金が発生します。違約金の金額は、基本的には不動産売買代金の10~20%程度です。
ここで思い出していただきたいのが、先ほどの「ローン特約」です。ローン特約が付いていないと違約金の支払い義務も生じるため、融資が下りなかった場合の損失は大きくなります。できればローン特約を付けてもらい、リスクを軽減しておくことが大切です。
◆確認書
売主による、物件に関する告知事項が記載されています。雨漏り、シロアリの発生、心理的瑕疵、修繕工事など、物件を保有していた期間の出来事を買主に知らせるための書類です。必ず取得すべき書類ですが、添付されていないこともあるので注意してください。
次に、「不動産売買契約書」についてです。こちらの内容は、重要事項説明書とほぼ重複しています。そのため読み飛ばしがちですが、差異がないかどうか一通り目を通しておきましょう。
唯一注意したいのが、「実測売買」に関する事項です。売買契約書の多くは、登記簿面積での売買です。実測をしたときに面積の増減があっても、清算はしないことになっています。広い物件を安く買えればラッキーですが、その逆もありえます。そのため実測済みの物件を購入するのがお勧めですが、交渉によるところが大きいので「できれば」という感覚でいいでしょう。