要旨
昨年後半から回復基調にあった経済活動は新型コロナ感染拡大を受けて再び停滞色を強めており、不動産市場の先行きについても不透明感の強い状況が続いている。2021年1-3月期の実質GDPは3四半期ぶりにマイナス成長となった。
住宅市場は立ち直りの動きを見せるなか価格が上昇している。オフィス市場は全国的に空室率が上昇している。ホテル市場は厳しい環境が続いており、1-3月の延べ宿泊者数はコロナ禍以前の2019年対比で▲54.7%減少した。
物流市場は、首都圏・近畿圏の空室率が1%台で需給環境は良好である。第1四半期の東証REIT指数は+12.8%上昇し5カ月連続で上昇した。
1―経済動向と住宅市場
1-3月期の実質GDP(1次速報)は前期比年率▲5.1%と3四半期ぶりのマイナス成長となった。対面型サービスを中心に民間消費が落ち込み、経済正常化の動きはいったん足踏みとなった。4/25に発令された3度目の緊急事態宣言が対象地域を広げて5/31まで期限延長されたことで、景気に対するさらなる悪影響が懸念される。
1-3月期の鉱工業生産指数は前期比+3.0%と3四半期連続の増産となったが、前期(+5.7%)からは伸びが低下した[図表1]。輸出はすでにコロナ前の水準を上回るものの、国内需要の回復が遅れており、1-3月期の生産は1年前と比べて▲1%程度低い水準にとどまっている。
住宅市場では、マンションの新規発売戸数や成約件数が2ケタの増加を示すなど立ち直りの動きを見せるなか、価格が上昇している。1-3月の首都圏のマンション新規発売戸数は前年同期比+37.1%と大幅に増加した。
マンション発売は昨年の落ち込みから回復基調をたどっている。1-3月の首都圏の中古マンション成約件数は前年同期比+12.2%となり、調査開始以来の過去最高を記録した。新規登録件数の減少によって品薄感も見られるなか価格が上昇している。
2月の首都圏の中古マンション価格は8カ月連続で上昇し、1年間の上昇率は+3.5%となった[図表2]。
2―地価動向
地価は都心商業地を中心に下落傾向にある。国土交通省の「地価LOOKレポート(2020年第4四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「15」、横ばいが「47」、下落が「38」となった[図表3]。同レポートでは、「下落地区の割合は、用途別では商業系が住宅系より高く、地域別では大都市圏が地方圏より高い傾向にある」としている。