3.水害リスクの重要事項説明が義務化へ
本レポートの分析では、分譲マンション価格に対し、「地震リスク」は統計的に有意な影響が見られた一方、「洪水リスク」は影響が見られなかった。
しかし、気候変動等の影響により、1時間の雨量が50㎜以上の「非常に激しい雨」は増加傾向にあり※、実際には水害に関するリスクは高まっている[図表14]。こうした状況を踏まえて、2020年7月に宅建業法施行規則が改正され、不動産取引時における重要事項説明の際に、水害ハザードマップを提示し、取引対象物件の所在地について説明することが義務化された。
※気象庁によれば、最近10年間(2010~2019年)の平均年間発生回数(約327回)は、統計期間の最初の10年間(1976~1985年)の平均年間発生回数(約226回)と比べて約1.4倍に増加した。
具体的な説明方法として、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(ガイドライン)」に、下記の項目が追加された。
・水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと
・市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと
・ハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと
・対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること
今回の改正により、「洪水リスク」が住宅購入検討者により強く認識されることで、今後は不動産取引の意思決定において「洪水リスク」に関する情報の重要性の認識が高まり、マンション価格にも影響を及ぼす可能性がありそうだ。
吉田 資
ニッセイ基礎研究所
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