契約において確認すべき、3つの重要ポイント
前述したとおり、サブリース業者から重要事項の説明を受けること、広告を鵜呑みにしないこと、不当な勧誘等を行う業者とは取引しないことは重要なことですが、それ以上に大切なのは、サブリース契約書の各条項をしっかりと理解して、そのリスクを把握することです。以下において、サブリース契約で確認しておくべき重要なポイントを説明します。
(1)契約期間
まず確認したいのは、賃貸の契約期間です。契約期間は、各業者によって様々で、2、3年を契約期間とするもの、10年、20年あるいは30年を契約期間とするものもあります。賃貸の契約期間を定めた場合には、後述する中途解約条項がない限り、契約期間の途中で解約することはできません(ただし、家賃不払いなどの債務不履行があった場合を除きます)。
例えば、契約期間が20年である場合、その間に事情が変わって自ら物件を使いたい場合などでも、サブリース会社が任意に応じてくれなければ契約を解約することができません。他方で、契約期間が短い場合には、サブリース会社から契約期間満了時に更新を拒絶されれば契約が終了するため、短期で更新を拒絶されるリスクが高まります。したがって、ご自身が購入する物件の用途や性質などに応じて、契約期間を慎重に検討する必要があります。
(2)中途解約条項
次に確認して欲しいのは、中途解約条項があるか否かです。中途解約条項とは、賃貸借契約の当事者が、契約条項に定める要件・手続に従った解約申入れを行うことによって、契約期間の途中での解約を認める条項です。賃貸の契約期間が長期に亘る場合であっても、中途解約条項が定められていれば、解約の申入れを行うことができます。
ただし、中途解約条項がある場合であっても、その内容にかかわらず、賃貸人(オーナー)から解約申入れを行う場合には、「正当事由」がなければ解約が認められない点に留意が必要です(借地借家法28条)。
しかし、中途解約条項がない場合には、「正当事由」の有無を検討するまでもなく、契約期間の途中で解約申入れをすること自体ができません。ですから、中途解約条項があるか否か、どのような要件手続で解約できるのかについては、十分に確認しておく必要があるでしょう。賃貸人から解約を申し入れた場合に、賃貸人から相当額の違約金を支払わねばならない旨の条項がある場合などもありますので、十分に留意が必要です。
(3)賃料増減額請求に関する条項
さらに確認したいのは、賃料増減額請求に関する条項です。賃貸借契約書には、賃料増減額請求を行使できる場面、要件などが規定されていることが多いため、その内容について十分に確認しておく必要があります。例えば、10年間は、賃料の増額も減額も請求できないという条項があった場合はどうでしょうか。一定の期間賃料増額請求ができない旨の特約は有効である(借地借家法32条1項但書)ものの、賃料減額請求ができない旨の特約は、無効であると解されております(最判平成16年6月29日判決など)。
したがって、上記のような条項がある場合、賃料増額は一定期間できないものの、賃料減額は行うことができるという一方的な内容になることを理解しておく必要があります。なお、契約書にどのような記載があるにせよ、借地借家法32条に基づく賃料減額請求は行うことができると解されており、賃料が減額されるリスクがあることを認識しておく必要があります。
加えて、賃貸借契約書に、賃借人から賃料減額の請求があった場合には、当事者間の協議が調わない場合であっても、調わない間は、賃借人が減額を請求した金額を暫定的に支払えば足りるという条項などが設けられている場合があります。
しかし、このような条項は、賃貸人にとって不利なものであるため留意が必要です。すなわち、借地借家法32条3項は、「建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる」と規定しており、賃料減額の請求がされた場合であっても、裁判が確定するまでは、賃貸人が相当と認める額(これは従前の賃料であると解されています)の支払いを請求できます。つまり、借地借家法上は、例えば、月10万円の賃料について、8万円に減額するという請求を受けても、賃料減額調停などが確定するまでの間は、月10万円を賃借人は暫定的に支払う必要があるわけです。
しかし、上記のような条項が契約書に設けられている場合は、賃借人は暫定的に8万円を支払えばよいことになりますので、賃貸人にとっては不利な内容となります。
以上のとおり、サブリース契約を締結する場合には、まず、サブリース業者がサブリース新法を遵守しているかどうかに注意することが重要です。そして、それだけでなく、実際のサブリース契約書の内容の重要な部分を確認しておきましょう。そうすることで、できる限りのトラブルを防ぐことができます。
山口 明
日本橋中央法律事務所
弁護士
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