地主を縛りつける「借地権」の問題…借地人を円満に退去させる方法と条件【弁護士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

土地を貸しているが、借地料だけでは収益的に不足を感じる。なんとか土地の使用権を取り戻し、希望にかなった活用をしたい…。そのように考えている土地所有者の方は少なくありません。しかし、賃借人の権利は法律で手厚く守られており、対応は簡単ではありません。賃借人をスムーズに立ち退かせ、土地を取り戻すにはどんな方法があるのでしょうか。日本橋中央法律事務所の山口明弁護士が専門家の見地から詳しく解説します。

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「借地料に不満、退去してもらいアパートを建てたい」

★地主Aさんの悩み★

 

現在、私が所有する土地に、借地人が建物を建設して事業を行っています。しかし、借地料だけでは利回りが不十分だと感じています。そのため、いずれ退去してもらい、更地にして自分でアパートを建て、家賃収入を得たいと考えているのですが…。

 

上記のAさんと同様の状況にある地主の方は、かなり多いのではないでしょうか。このような事案において、借地人に土地の明渡しを求めることができるのかを検討してみましょう。

 

まず、建物所有を目的とする借地契約において、存続期間の途中に解約できる条項を設けても無効であると解されています(借地借家法9条)。したがって、土地の明渡しを求めたい場合には、借地期間の期間満了を待たなければなりません。

 

そして、借地期間が満了する場合であっても、借地人が契約の更新を請求したときは、建物がある場合、契約を更新したものとみなされます。ただし、借地権設定者が遅滞なく、一定の要件を満たす異議を述べたときは更新されません(借地借家法5条1項)。

 

なお、借地権設定者から異議を述べることができるのは、

 

①借地権設定者が土地を使用する必要性

②借地人が土地を使用する必要性

③借地に関する従前の経過

④土地の利用状況

⑤財産上の給付の申出

 

上記を考慮して、正当事由があると認められる場合のみです(借地借家法6条)。

 

そのため、交渉や裁判を行うにあたっては、①から⑤までの要件に沿って、正当事由があるか否かが判断されることになります。

重要なのは借地権設定者・借地人それぞれの「必要性」

例えば、①(借地権設定者の使用の必要性)については、土地をより高収益にて運用する計画(有効利用計画)の場合も含まれると解されています。ただし、この計画は抽象的なものでは足りず、具体的に示す必要があります。

 

また、②(借地人の使用の必要性)については、当該土地及び建物を使用している場合には、高い必要性が認められている場合が多いものの、その際には、代替的移転先があるかどうかが重要な要素として検討されています。

 

さらに、③、④、⑤の要件も補充的に検討されますが、その中で特に重要となるのは、⑤の財産上の給付の申出(主に立退料)となります。

 

なお、条文上、①、②の要件が主要な判断基準であり、立退料はあくまでも補完事由として考慮されます。つまり、裁判となった場合には、①、②の要件が不十分であれば、いくら高額な立退料を提示した場合であっても、正当事由が具備されない可能性があることに留意が必要です。

 

そして、⑤の財産上の給付の申し出は、多くの場合は立退料となります。その場合の立退料の金額は、個別事案の個別事情により異なりますが、大きく分けると、

 

(ⅰ)借地権価格を基準として調整するもの

(ⅱ)移転のための実費・損失等の補償額を基準とするもの

 

この2種類があります。なお、借地権価格とは、借地借家法に基づき土地を収益することにより借地権者に帰属する経済的利益とされ、更地価格の6割から7割程度となることが多いとされています。

 

なお、裁判例の傾向としては、(ⅰ)の借地権価格相当額を基準として、これに諸事情を勘案して立退料を算定している事例が多いように思われます。ただし、東京高裁平成11年12月2日判決など、(ⅱ)の移転するための費用等を参考にして立退料を認めた裁判例もいくつか存在します。

 

上記(ⅰ)の基準をもって立退料を算定している裁判例が多いのは、建物所有を目的とする借地は、借地借家法の保護を受け、長期間土地を占有し、独占的に使用収益し得る安定的な財産的価値利益を有することから、更新しないということは、この財産的価値を借地人から買い取るのと同視できることが理由のひとつとしてあると考えられます。

 

他方で、代替地への移転が容易であると評価されている事案や、当該借地を借地人が当初の目的に従って利用していなかった事例については、(ⅰ)のような保護を与える必要まではないため、(ⅱ)の方式で算定されている傾向があるように思われます。

 

なお、借地契約の更新がない場合には、借地人は、借地権設定者に対して、当該土地上の建物を時価で買い取るように請求する権利を有しています(借地借家法13条)。したがって、更新について異議を述べる場合には、立退料だけではなく、当該建物を買い取るための費用も準備しておく必要があります。

 

以上のとおり、土地の有効活用を計画する場合には、借地契約の存続期間を確認した上で、当該期間に応じて十分に具体的な計画を立案し、それを実現するために必要な資金(計画を実現するための資金及び立退料等)の準備が必要となることに留意が必要です。

 

 

山口 明
日本橋中央法律事務所
弁護士

 

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日本橋中央法律事務所 弁護士

2005年弁護士登録、東京弁護士会所属。2005年から2011年に片岡総合法律事務所、2011年から2016年に野田総合法律事務所(パートナー弁護士)を経て、2016年に日本橋中央法律事務所を開設して現在に至る。特に、金融に関わる法務、不動産に関わる法務及び信託に関わる法務を得意にしている。

《日本橋中央法律事務所》
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著者紹介

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