人生100年時代…「夫婦間の不満蓄積」の度合いが増加
近年、結婚35年以上の熟年夫婦の離婚が増加傾向にあります。長年連れ添った夫婦が、一体なぜ離婚に至るのでしょうか。
最大の問題は、人生100年時代を迎えて、蓄積され続けた夫婦間の不満が今にも爆発寸前になっていることです。無視や我慢をするには残された夫婦だけの日々が長すぎるのです(図表参照)。
夫婦間の不満で重要なのは、まず夫の家事・育児・介護分担の不足です。それでも大半の妻が、たとえフルタイムの正規雇用であっても「男は仕事、女は家庭」の性役割分業観を容認しています。もし、感謝や労いの言葉など、夫婦間にコミュニケーションがあればまだまだ夫婦愛が冷めることはなかったのです。
残念ながら、そうしたコミュニケーション不足に加えて、夫婦間のスキンシップ不足が冷えた夫婦愛をさらにおとしめています。そして日本の男女は社会的にみれば社会関係資本が乏しく、特に男性は世界一の孤独です。親しい友人がなく、特にスポーツ・娯楽・趣味の集まり、町内会・自治会やボランティア・NPO・市民活動などへの参加といった対等な人付き合いが貧弱です。
このいわば社会的に孤立した孤独が、夫婦の不満やストレスが解消されずに放置される背景となり、周囲との信頼感・連帯感や個人の満足感・幸福感をも失わせることになります。それらが、蓄積した夫婦間の不満と重なって熟年離婚に至る可能性があるのです。
Case:妻のために55歳で転職…冷めることない夫婦愛
人生100年時代に向けて、奥様のために55歳で転職した男性の人生変革とその夫婦愛の実例について述べたいと思います。
83歳のAさん(仮名)は、私の診察室に入るなり、「先生、元気ですね」と、満面の笑み。「それは、私のセリフです。Aさんの笑顔に私の方こそ元気をもらえますよ」そんな軽口が言えるような、爽やかで気の置けない雰囲気をいつも周囲に醸し出しています。身なりはいつも小ぎれいです。晩秋の今日は厚手の淡いピンクの長そでシャツに、茶色のデニムのパンツ、襟元からライトブルーの薄いスカーフをのぞかせ、オシャレを十分に楽しんでおられます。
Aさんは、3年ほど前より高血圧で私の外来を受診し、折に触れ同じ年の奥様のことをお話しされていました。奥様は50代になってから、腰椎の病気で腰痛や歩行困難が強くなり、身の回りのことや家事が次第にできなくなっていました。
そこでAさんは決心したのです。
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