(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が社員のために加入する企業年金には、「企業型DC(企業型確定拠出年金)」と「iDeCo+」がありますが、どちらに加入すべきかは悩みどころです。本記事では、iDeCo+導入のメリットを、2つの事例から見ていきます。※本連載は、山中伸枝氏の著書『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』(同文舘出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

ケース2:従業員30名の学習塾

◆業種:学習塾
◆事業規模:役員と従業員30名
◆採用制度:iDeCo+
◆目的と効果:
・会社の体質強化のため
・勤続年数に応じて事業主掛金を決定
・福利厚生の拡充で求人対策にも期待

 

学習塾経営のEさんは、従業員からの提言がきっかけでiDeCo+導入に踏み切りました。この従業員は、前職で企業型確定拠出年金をしており、学習塾に転職後、やりがいは増えたものの処遇には不満を持っていたのだといいます。せめて退職金制度くらいはないと、人材募集をするときにも見劣りするのではないだろうかと会社のことも心配していました。

 

Eさんは、やはり退職金となると長い時間軸の中でお金の準備をしていかなければなりませんし、複雑な会計処理や制度の導入や維持にお金がかかる点が経営者としては前向きになりにくいと感じていました。

 

しかしiDeCo+であれば、初期費用もかかりませんし、メンテナンス費用もかかりません。事務手続きについては、制度導入時にいくつかの書類を国民年金基金連合会への提出が必要ですが、ウェブサイトに丁寧な記入例などが掲載されているので、特に問題ないと思いました。

 

iDeCo+導入にあたり、整備したのは給与天引きの仕組みです。何日締めで、いつの給与に反映させるのか、退職月の掛金の拠出方法、休職中の取り扱いなどは労使で合意を得ました。

 

iDeCoは年に1回掛金の変更ができますが、従業員が金融機関だけに届け出をしてしまうと、会社の口座から振替される金額と変更後の掛金額とに差額が生じ後処理が大変になるので、年に1回の金額変更と新規加入希望者(中途入社については、入社時にも加入の意思確認をする)の募集を周知し、手続きを漏れなくすることにしました。

 

さらにiDeCoは、1年間の掛金積立額を一定とはせず、ボーナス月に増額といった年単位での調整が可能です。そちらも事務処理の手間を省き、ミスを防ぐために、毎月定額のみとしました。従業員の掛金は給与額から差し引いたうえで源泉処理をするので、毎月処理が発生すると社内の事務コストがかかるのです。

 

手間は多少かかるものの、それ以上に魅力に感じた点は、求人に活用できる制度だとわかったことでした。

 

経済状況が不安定になると、より福利厚生が充実している企業に人が集まりやすくなります。iDeCo+は中小事業主掛金納付制度と求人票に謳うことができ、本人も自分のiDeCoのマイページで残高確認をする際に、事業主掛金額を容易に目視することができます。これにより、会社の福利厚生の充実をしっかりと認識してもらえると期待しました。

 

退職金だと退職する時にしか支払われませんが、iDeCo+だと、毎月掛金として会社が支援金を拠出してくれるので、わかりやすいのです。

 

会社が負担する掛金は、資格ごとに決めることができます。資格とは、「職種、勤続期間の他、労働協約または就業規則、その他これらに準ずるものにおける給与及び退職金等の労働条件が異なるなど、合理的な理由がある場合において区分するもの」と定められています。そこで、従業員の定着、管理面での簡便さも考慮し、勤続年数により掛金に段階を設けています。

 

山中 伸枝

株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役

 

 

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会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方

会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方

山中 伸枝

同文舘出版

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