(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が社員のために加入する企業年金には、「企業型DC(企業型確定拠出年金)」と「iDeCo+」がありますが、どちらに加入すべきかは悩みどころです。本記事では、iDeCo+導入のメリットを、2つの事例から見ていきます。※本連載は、山中伸枝氏の著書『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』(同文舘出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

ケース1:夫婦で経営する、従業員2名の不動産会社

◆業種:不動産会社
◆事業規模:役員と従業員2名
◆採用制度:iDeCo+
◆目的と効果:
・従業員の老後支援のため
・対象者全員に事業主掛金4,000円を拠出
・税制優遇制度で老後資産形成の効率アップを実現

 

夫婦で不動産会社を経営するDさんは56歳、自身もそろそろ老後が気になってきました。最近、奥さんが病気になったりと苦労も続き、これからのお金について今までになく真剣に考えるようになったそうです。

 

これまでは税理士の勧めで小規模企業共済をしてきました。これは月7万円まで積立ができ、その掛金全額が所得控除として認められるので、広く利用されている制度です。会社の経費としては落とせませんが、年間84万円課税所得を圧縮できるのは大きいものです。

 

自分の老後について考えていたら、ふと社員のことも気になってきました。会社の従業員は2人、どちらも40代後半に差しかかっています。

 

そこでDさんが着目したのが、個人型確定拠出年金iDeCoです。掛金を利用して投資信託などで運用をするという点は少し難しいのではとも感じましたが、元本確保型という定期預金の選択肢もあるということがわかり、これなら大丈夫だと判断しました。

 

iDeCoはあくまでも本人の任意加入なので、社員に対して無理強いはできないと思ったDさんですが、iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)を活用すれば、iDeCoに加入している社員について、会社が掛金援助をしてあげられるということがわかりました。会社からの資金援助があれば従業員は喜ぶに違いないと思ったDさん、さっそくiDeCo+導入の申請をしました。

 

Dさんは、従業員へiDeCoの説明をし、加入を促しました。会社としては毎月4,000円を加入者に資金援助することにしました。iDeCoの毎月の最低掛金は5,000円なので、会社が4,000円出すということは、社員は月1,000円でiDeCoが始められるというわけです。iDeCoの掛金の枠は月2万3,000円ですから、本人が希望すればあと1万9,000円の追加掛金を拠出することができます。

 

会社として負担する月4,000円の掛金は全額損金計上が可能です。社会保険料の算定対象となりませんので、それ以上の負担は発生しません。また、導入のための費用が一切かからないことも魅力です。あくまでも個人の任意加入なので、加入時の数千円の手数料は本人が負担します。

 

iDeCo+は、会社として本人掛金を給与天引きするなど若干の手間がかかりますが、福利厚生の拡充と考えれば費用対効果は大きいと判断したのです。

 

iDeCo+は、社長であるDさんも利用できます。iDeCoは60歳までしか掛金が出せないので、56歳のDさんはあまり時間がないからやってもムダだと思っていましたが、法改正により2022年から65歳まで加入が可能と聞いて、反対にやらないのは損だと思ったのです。

 

また、運用は最大75歳まで継続できるようになるので、実は投資好きのDさんも意欲がわきました。iDeCoの口座の中で投資信託を購入すると、通常の金融機関より低コストで運用が可能です。また、運用益は非課税ですから、あと20年近く、この制度の中で資産運用ができるのは絶好のチャンスと考えています。

 

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会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方

会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方

山中 伸枝

同文舘出版

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