(※写真はイメージです/PIXTA)

iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、従業員300名以下の中小企業が加入できる、企業型DCとiDeCoのハイブリットの仕組みを持つ年金制度です。本記事では、制度を導入した場合の「事業主が負担する掛金の決め方」を中心に見ていきます。※本連載は、山中伸枝氏の著書『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』(同文舘出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

事業主掛金は「1,000円」から設定可能

iDeCo+の事業主掛金は、全対象者に定額あるいは、勤続年数・職種ごとに1,000円から2万2,000円までで金額を設定します。

 

iDeCoを始める際の最低掛金は月5,000円ですから、事業主の掛金が1,000円であれば、従業員は4,000円でiDeCoを始められることになります。事業主掛金が2万2,000円であれば、満額が2万3,000円ですから、本人掛金は1,000円です。

 

例えば、事業主掛金が5,000円だったら、従業員は個人の掛金0円でもiDeCoができるのかというとそうではありません。従業員は最低でも1,000円は本人負担しなければならないルールです。

 

iDeCo+をしたからといって、iDeCoの掛金上限が変わるわけではありませんが、全額自前のポケットからお金を積立てるのと、会社からお金を出してもらえるのとでは、やはりモチベーションが違います。

 

事業主掛金は、原則拠出対象者全員が同額になるように設定することになっていますが、一定の職種、一定の勤続期間、あるいは労働協約または就業規則、その他これらに準ずるものにおける給与及び退職金など労働条件が異なるといった合理的な理由がある場合においては、区分する資格ごとに設定できることになっています。

 

もちろん、同じ資格内において、事業主掛金が異なってはいけませんので、ご注意ください。

福利厚生で「全対象者一律」だと管理しやすい

iDeCo+を福利厚生の一環として導入する際には、事業主掛金を一律とする会社もあります。例えば4,000円とか3,000円とか定額に定め、iDeCoに関心があった人がより加入しやすくする「仕掛け」を作ってあげるという意味合いです。

 

iDeCoの最低掛金は5,000円ですが、その額がなかなか出せないという人もいます。それが事業主掛金のおかげで気軽に始めることができるとなると、喜ばれると思います。また、全対象者掛金一律の会社側のメリットは管理がしやすいことです。

「勤続年数」に応じて設定することも可能

事業主掛金を勤続年数で区分する会社もあります。この目的は、長く働いてもらいやすい環境の整備です。

 

中小企業の場合、従業員の定着に頭を悩まされている会社様は多いものです。そこで、長く働いている従業員に対するインセンティブとするのが、勤続年数での区分による事業主掛金です。

 

この場合の注意点は、入社日管理です。必ずしも新卒採用ばかりではない中小企業の場合、従業員の入社日はバラバラです。3月入社も5月入社もいます。これを「毎年9月の満勤続年数に応じて事業主掛金を見直す」というようなルールにしてしまうと、9月以外の入社者が不利益を被ってしまいます。

 

入社月はしっかり管理して、掛金の支払い漏れ、変更漏れがないように注意しましょう。そのため、あまりにも細かい掛金設定はミスの元になりかねません。

 

勤続年数で区分する場合、一定の勤続期間以上を拠出対象とすることも可能です。

 

万が一、定着せず早期で退職しても、拠出した掛金の返金を求めることはできませんので、それをよしとしない場合は、勤続年数〇年以上という設定を検討するとよいでしょう。

「職種」に応じて設定することも可能

iDeCo+事業主掛金の設定方法には、「職種」と「労働協約または就業規則その他これらに準ずるものにおける給与及び退職金等の労働条件が異なるなど合理的な理由がある場合」に応じた掛金を設定することも可能となっています。

 

職種とは、一般職、営業職、研究職といったものを指します。給与及び退職金などの労働条件が異なるなど合理的な理由がある場合には、役職等が該当することも考えられます。

 

ただし、これらの区分で掛金を設定する場合は、労働協約や就業規則の写しの提出も求められるため、きちんとして人事体制が整っていることが重要です。

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会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方

会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方

山中 伸枝

同文舘出版

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