「訪問診療」を受けられる人の条件は?
在宅療養を検討している患者さんやその家族にとって、「在宅医療」「往診」「訪問診療」などという単語を耳にすることは多いと思います。
これらはどれも同じことを指していると思っている人は少なくないのですが、実はどれも少しずつ意味が違います。長期にわたり在宅療養を継続するためには「訪問診療」という制度を利用することが一般的です。
訪問診療は厚生労働省により定められた制度で、保険診療の一つとして行われます。訪問診療にはさまざまなルールがあり、それを満たすことが医療保険適応の条件となります。
まず、訪問診療を受けるための大前提として、病状の悪化や介護が必要などの理由で「一人で歩いて通院することが難しい人」という条件があります。
病気が重くなり、体力的に通院が難しい方はもちろん、たとえば認知症の方などで、歩くことには問題はなくても、一人で通院すると途中で迷ってしまう可能性がある方なども対象となります。
病院への通院を続けながら訪問診療を受けている人もいます。たとえば、数ヵ月に一度、家族の援助で病院への通院を続け、病院でしか受けられない専門的な検査や治療を継続しながら、普段は訪問診療で病状の確認や投薬を受けます。
体調が悪化した際には、まず在宅医が電話相談もしくは往診で対応し、病院の受診や入院治療が必要な場合は在宅医が病院に連絡するという形で、在宅医と病院の連携により、安心して在宅療養を継続している患者さんもいます。
また「がん」の患者さんで、病状が進行し、手術や抗がん剤治療などの積極的な治療が困難となった場合は、病院の通院と並行して早めに訪問診療を導入し、早期から在宅での緩和ケア(がんに伴うつらい症状を和らげる治療)を開始します。
そうすることで、通院から在宅療養へとスムーズに移行することができ、より質の高い在宅療養が可能となります。
訪問診療は、毎月1回以上、前もって予定を決めて自宅を訪問し診療を行うことが必須条件です。それに加え、毎月「在宅時医学総合管理料」を算定することで、24時間体制で医師が対応することが可能となります。
体調が悪化したときに24時間体制で医師に相談できて、必要時には往診を受けられるというのは、訪問診療の最大のメリットです。
「自宅で最期まで過ごしたい」「何があっても病院は受診しない」と決めている患者さんにとって、最期の時=死はいつやってくるか分かりません。死亡診断ができるのは医師だけですので、最期は必ず医師が往診を実施して診断する必要があり、その意味でも、24時間体制で対応する訪問診療の導入は重要なのです。