※画像はイメージです/PIXTA

病状が深刻な患者や独居の患者は、「最期は家で迎えたい」という要望を病院から聞き入れられないことが多数。しかし、不可能なことではありません。「在宅医療」の可能性について、在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長、宮本謙一氏が解説します。

どんな病状でも「家に帰るのは無理」ではない

「訪問診療」が定期的・計画的に医師が患者さんの自宅に赴いて行う診療であるのに対し、医師が診療上必要であると判断したときに患者さんの自宅に赴いて行う診療が「往診」です。そして、「訪問診療」と「往診」をまとめたものを「在宅医療」と呼びます。

 

「早く家に帰りたい」と入院中の病院の主治医に訴えても、「家に帰るのは無理」と断られ、療養型の病院(長期入院可能な病床)や有料老人ホームなどを勧められるケースがあります。

 

しかし、患者さんや家族が在宅療養を希望しているのであれば、どんな疾患であれ、どんな病状であれ、在宅療養は可能であると私は考えています。

 

在宅療養を目指すうえで大事なのは「どんな生活がしたいのか」について明確なイメージをつくることです。そのイメージを元に、在宅でどこまでの治療を行うのか、どのような介護の体制を構築するのか、具体的な検討に入ります。無理な治療、無理な介護を望まない限り、在宅療養は必ず実現できるはずです。

 

入院中の病院の主治医や看護師は、当然のことながら、治療のことを最優先に考えます。病院の医療従事者の多くは在宅医療の現場を経験していませんから、自宅でどのような形でどこまで治療を継続できるのかをイメージすることが難しく、「家に帰るのは無理」という発言につながってしまうのだと思います。

 

しかし、自宅に帰ってから大事なのは「どのような生活をするか」であり、治療はあくまで生活のなかのごく一部です。その観点で、退院して在宅療養を行うことができるかを総合的に検討すべきです。

 

たとえ重い病状であっても、必要に応じて在宅医・訪問看護師・訪問薬剤師のチームによる在宅医療を開始することで、入院中に近い形の医療を受けることができます。

 

とはいえ、自宅に医師や看護師が常駐しているわけではないので、緊急時の迅速な対応という意味では劣ります。また、たとえば点滴治療については、毎日何度も訪問看護師が自宅を訪問して点滴をつなぎ替えるというのはマンパワー的にも費用の面でも困難であり、点滴の実施回数が限られ、点滴終了後の処置の一部を患者さん自身や家族に協力していただく場合があるなど、治療の制限が生じる場合もあります。

 

このような「自宅での治療の限界」を受け入れ、それよりも生活上のメリット、自宅での自由な生活を希望する場合は、どんな疾患であれ、どんな病状であれ、在宅療養は可能です。

 

そうなると、どのような生活を送るか、生活上のサポートが重要となります。同居の家族が主な介護者となるケースが多いと思いますが、近隣の家族が交代でサポートする場合もあります。それでも24時間体制のサポートは難しい場合が多く、介護保険サービスを利用して患者さんの生活を支えるケースがよく見られます。

 

次ページ独居だけれども「家で最期を迎えたい」場合には

※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

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