(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載では、仕事の帰りに脳出血で倒れ、一時意識不明の重体になるも、一命を取り留めた経験を持つ宮武蘭氏が、脳出血の後遺症やリハビリの実際を解説していきます。

「もっと気を付けていれば」後悔の念が湧き上がるが…

「もっと気を付けていれば」「無理をしていなければ」後悔の念は、次々湧き上がる。当たり前だが、時計の針を戻すことはできない。元気だった、あの日々に戻ることはできない。

 

現状の自分を客観的に見つめる、自分の中に新しい二人目の人格を作り出し、とにかく前向きなことしか考えないよう、思考の舵を切った。本当は倒れる前の日常に戻りたい。だが無情にも時間は流れている。

 

『まだ若いんだ! 這い上がるんだ!』決して若くはない中年だが、毎日、気持ちを鼓舞していた。つらい気持ちを少しでも出したら、砂山のように一気に自分が崩れそうだった。暗がりのベッドの中で涙が出そうになった時は、目を瞑り、無理やり眠った。

リハビリ専門病院は年中無休…元旦からも「リハビリ」

 

新年を病院で迎えた。朝、ホールで他の患者さんと朝食を待っていると、「初日の出が見えるよ!」とある患者さんが言われたので、窓の方を見ると山際にはっきりとオレンジの太陽が見えた。それを見た瞬間、『来年は絶対に病院でない場所で初日の出を見よう!』と決意した。

 

お正月を感じられるメニューの朝食を目の前に、感謝しながらいただいた。入院中での食事は本当に楽しみだ。私は、まだ柔らかめのご飯だが、それでも食べられることの幸せを日々、感じていた。

 

食後は処方された薬を飲まなければならない。私の薬は看護師が管理していて、毎食後、テーブルまで薬を持って来てくれていた。食事後、薬を飲む。

 

「ありがとうございます。ご馳走様でした」1日3回のルーティン。リハビリ専門病院は、年中無休だ。元旦からも当然リハビリである。これには、正直驚いた。しかし、当時の私にとっては忙しいくらいが、ちょうどよかった。

 

なぜなら、余計な悩みを持つ時間がなくなるのだから。眠気はまだまだあったが、何故かリハビリに積極的に取り組むことができた。

「座る・立ち上がる動作」早くクリアできたワケ

特に足のリハビリは、療法士に組んでいただいたメニューをクリアしていく喜びも大きかった。学生時代に運動をしていたおかげか、リハビリがきついとは感じなかった。そして、頭で筋肉の動きをイメージしながら、リハビリメニューに取り組んでいた。

 

脳出血で半身麻痺になったのが、足に関しては、『スポーツでケガをしたんだ!』と、架空の設定をつくった。その方が、リハビリに前向きに取り組むことができる気がしたからだ。

 

脳出血から現実逃避したということでもないが、今思い返せば、いかに前向きに行動できるかを、自分なりに模索していたのだろう。まずは車椅子から立ち上がり座る、という動きの練習を繰り返す。

 

麻痺を起こしている右足はすべてが不安定なので、装具をつけていただきリハビリをする。立ち上がる時には、視線を床に落とし、しっかりと前傾姿勢のイメージで腰を上げ立ち上がる。

 

不思議と視線が前を向いたり、顔が真っ直ぐに前を向いていたりすると、上手く立つことができない。そんな時、若い頃スキーをした経験があったことを思い出した。高校の修学旅行が初スキーで、社会人になってから趣味でスキーに行った。10回ほど行ったと思う。スキーでは重心が後ろにいくと決まってこけたものだ。

 

でも恐れずに重心を前に乗せ、膝の力も使いコースを滑っていくと、転倒することもなく、気持ちよく滑れた。過去の体験は体が覚えてくれている。座る・立ち上がるという動作は早くクリアできた。

 

 

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宮武 蘭

1969年生まれ。2015年に脳出血で倒れ、一時意識不明の重体になるも一命を取り留めた経験を持つ。その後、片麻痺の後遺症は残ったが、懸命なリハビリ、様々な方々のサポートのおかげで日常生活、社会生活を取り戻す。現在は『毎日起こることのすべてがリハビリ』をモットーに、片麻痺障害者として生きている。

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『アイアムカタマヒ 右半身麻痺になった中年女の逆境に打ち克つリハビリ体験記』より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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