(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、現役医師である中村重信氏、梶川博氏が、家族や医療従事者が知っておきたい認知症の症状、治療法を分かりやすく解説します。

どうなると認知症なのか

「認知症」は病気です。一方、「もの忘れ」は認知症でないこともあります。その二つを見分けることは重要で、認知症診断の第一歩です。認知症であるかどうかはもの忘れをしている本人の生活を左右しますが、周りにいる家族や社会、国のレベルでも由々しき問題です。

 

単なるもの忘れだけなら、介護保険などの厄介にならなくてもよいので、経済的負担が少なくてすみます。「認知症」とは何かという定義はいろいろありますが、世界保健機構(WHO) による定義やアメリカ精神医学会による定義がよく使われています。

 

WHOの定義では「慢性あるいは進行する脳の病気によって生じる記憶の障害、思考能力の低下、時・場所・人が分からない(見当識障害)、理解が悪い、計算ができない、学習能力の低下、言語の障害、判断力の低下など多面にわたる高次の大脳機能が障害される症候群」とされています。

 

アメリカ精神医学会の定義では「複数の認知機能の障害があり、そのため社会的・職業的にも能力の低下を示す」とされています。認知機能の障害の中で、記憶力の低下、ことに短期記憶の障害と、記銘力障害が認知症の中核症状(これがないと認知症とはいわない)であり、認知症においてはこの障害が早期から現れます。

 

くわえて、古い記憶も多少障害されていて、認知症が進むにつれて顕著になります。記憶力の低下はもの忘れや一過性全健忘でも現れますが、認知症ではそれ以外の認知機能も障害されます。それ以外の認知機能とは、1.失語、2.失行、3.失認、4.遂行機能障害のいずれかを指します。

「運動性失語がみられる認知症」の特徴

音声を発することはできますが、意味のある言葉は話せません(運動性失語)。あるいは、意味のある言葉は発しますが、文章として意味をなしていないこともあります(感覚性失語)。運動性失語では言葉が探せないので、口数が減ります。

 

発語の努力はするものの、リズム感がなく、語句は短く、単語を羅列するようになります。「めがね」とか「時計」などの単語が出てこないので、「あれ」とか「それ」ですませます。人や場所の名前が出ないと、「あの人」とか「あそこ」と呼びます。

 

運動性失語がみられる認知症の人の脳をMRIで調べると、左前頭葉(優位半球)の後方下部の側頭葉に近い所が小さくなり、左のシルビウス裂が大きく開いています。また、脳の血流を放射能により測りますと、左前頭葉後方下部で血流が下り、左前頭葉後方下部での脳の働きが低下しています。

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症の人が見る景色 正しい理解と寄り添う介護のために』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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