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自民党の苦戦:鍵を握るワクチン接種
今回の都議選は年内に行われる総選挙の前哨戦と言われた。もっとも、過去10回の都議選のうち、1993、2005、2009、2017年の4回は直後に総選挙が行われたが、両選挙の関係が必ずしも連動しているわけではない。好例は前回(2017年)であり、自民党は7月2日の都議選で歴史的大敗を喫したものの、10月22日の総選挙では61.1%の議席占有率で圧勝した。また、1993年、都議選で現有議席を維持した同党だが、わずか3週間後の総選挙で大敗、7党連立の細川護熙内閣に政権を奪われている。
もっとも、今回の都議選の影響が無視できないのは、第1に自民党と公明党が選挙協力したにも関わらず、自民党の議席が過去2番目に少なかったことだ。前回の選挙において、公明党は小池百合子都知事率いる都民ファーストの会と連携した。国政で連立を組む両党の全面協力の結果、都議会で過半数に届かなかった意味は小さくない(図表1)。
第2には、自民党にとって思わぬ苦戦となった背景が、新型コロナ向けワクチン接種である可能性が否定できないことだ。6月中旬以降、ワクチン接種は菅義偉首相が目標として掲げてきた1日100万回のペースを維持できるようになった。その結果、直近において大手メディアが実施した世論調査では、菅内閣の支持率が小幅ながら上昇していたのである。
ところが、都議選の終盤、始めたばかりの職域接種が申請受付中止に追い込まれた他、自治体の接種もワクチン不足で滞る状況が伝えられた。その理由は、1)モデルナ製ワクチンの輸入量が契約上の予定量に届かなかったこと、2)ファイザー製ワクチンの在庫が一部の自治体に偏ったこと…の2点と見られる。河野太郎担当大臣は、7月6日の定例会見で、モデルナ製は7-9月期に予定量が供給されると発表した。
ただし、輸入数量の不足にも関わらず職域接種を加速させようとしたこと、自治体への配分に偏りが生じたことは、政府の対応の問題と言える。東京オリンピック・パラリンピックの観客に関する結論も未だ出ておらず、総選挙へ向け菅政権の行政力が問われる状況が続くのではないか。
野党の選挙協力:成果により総選挙への展開を模索
今回の都議選で注目されたのは、自公両党での過半数奪回と共に、国政野党である立憲民主党と共産党の実質的な選挙協力の成果だった。結果は全42区中、無所属を含めて21区で候補者調整が行われ、12区で議席を獲得、立民は改選前の8議席を15議席に伸ばしている(図表2)。
両党の政権構想については、立民、その有力支持団体である連合にアレルギーが極めて強い。しかしながら、次の総選挙での政権交代は困難と割り切れば、今回の都議選の結果を受け、一定の政策に関する合意には到達する可能性がある。その場合、両党の候補者調整は進むだろう。
2017年10月の総選挙結果を使ったシミュレーションでは、立民・共産の選挙協力は自民党にとり脅威だ。菅政権は、ワクチン接種の巻き返しに加え、総選挙前に大型の経済対策を示すことで、有権者の支持獲得を目指すと見られる。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『東京都議会議員選挙の衝撃』を参照)。
(2021年7月9日)
市川 眞一
ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー
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