6月米雇用統計で株式市場は最高値更新 利上げ予想に変化は?

7月2日に発表された6月米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比85万人増と市場予想の同72万人増を上回った一方、平均時給が前月比+0.3%と市場予想と一致したことから、FRB(米連邦準備制度理事会)による早期テーパリング/利上げ観測が後退したと報じられ、米国株式市場は最高値を更新した。しかし、利上げ予想に今のところ大きな変化は見られない。

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6月米雇用統計が好感され、NYダウ、S&P500、ナスダックはそろって最高値更新

6月米雇用統計の結果は、株式市場が「心地良く」感じられる内容だったのかもしれない。6月非農業部門雇用者数は市場予想の前月比72万人増に対し同85万人増となった一方、平均時給は前月比+0.3%と市場予想の同+0.3%と一致した。これを受けて、米国経済(労働市場)が順調に回復する中で、想定を上回る過度な賃金インフレは見られなかったことから、マーケットが懸念する早期のテーパリング(量的緩和縮小)や利上げ観測が「後退」したと相次いで報じられた。実際、7月2日の米国株式市場はNYダウ、S&P500、ナスダックの3指数がそろって最高値を更新する展開となった(図表1)。

 

日次、配当込み、米ドル建て、20年12月31日=100で指数化 期間:20年12月31日~21年7月2日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

[図表1]NYダウ、S&P500、ナスダック総合指数の推移 日次、配当込み、米ドル建て、20年12月31日=100で指数化
期間:20年12月31日~21年7月2日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

しかし、FFレート先物から算出された利上げ予想に大きな変化は見られない

FF(フェデラル・ファンド)レート先物から算出可能な市場参加者の利上げ(回数)予想を見ると、直近7月2日時点の予想は6月4日時点(6月のFOMC前)の予想と比較して、依然として利上げ観測が高まっていることが確認できる(図表2)。

 

単位:回、21年6月4日時点と21年7月2日時点の予想 ※FFレート先物は30 Day Federal Funds Future、1回分は0.25%と想定 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]FFレート先物から算出された各FOMCにおける利上げ回数予想(21年7月~23年2月) 単位:回、21年6月4日時点と21年7月2日時点の予想
※FFレート先物は30 Day Federal Funds Future、1回分は0.25%と想定
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

また、その状況はFFレート先物から算出された23年2月FOMCにおける利上げ回数予想の推移を見ても明らかだ。およそ1ヵ月前の23年2月FOMCにおける利上げ回数予想は約0.7回だった。それが、(6月雇用統計を受けて幾分低下したものの)直近は約1.1回と、1回0.25%の利上げが完全に織り込まれている(図表3)。

 

日次、単位:回、期間:21年6月4日~7月2日 ※FFレート先物は30 Day Federal Funds Future、1回分は0.25%と想定 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]FFレート先物から算出された23年2月FOMCにおける利上げ回数予想の推移 日次、単位:回、期間:21年6月4日~7月2日
※FFレート先物は30 Day Federal Funds Future、1回分は0.25%と想定
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

さらに、利上げ観測による期待インフレ率の低下等を背景に、米10年国債利回りも低下している。少なくとも短期金融市場や債券市場からは「早期利上げ観測」が後退したとは言い切れない状況だ。

米10年国債利回りの低下を受けてグロース株優位の展開

グロース株やバリュー株といったスタイル別の騰落率を見ると、7月2日は主に米10年国債利回りの低下を受けてS&P500ピュアグロース株指数(前日比+0.81%)がS&P500ピュアバリュー株指数(同-0.29%)を上回る展開となった。株式市場では、早期テーパリング/利上げ観測が後退したと解釈されたにもかかわらず、債券市場では早期利上げ観測から米10年国債利回りが低下し、それを受けて株式市場でグロース株優位の展開となったことは、マーケットの解釈に「ゆがみ」が生じているとも考えられる。「いいとこ取り相場」が復活している可能性には注意したい。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『6月米雇用統計で株式市場は最高値更新 利上げ予想に変化は?』を参照)。

 

(2021年7月5日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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