ドル円の見通し…ワクチン接種が進めばドル安円高か
ドル円は、日米の景況感格差(それに伴う先行きの日米金利差拡大観測)やワクチン戦略格差などが意識され、7月2日に一時111.66円をつけた(ドル高円安の動き)。その後は6月の米ISM非製造業景況指数が悪化するなど米国景気のピークアウト感が意識され、米長期金利は上がりにくくなるとの市場の見方から、ドル安円高圧力がかかっている。
とはいえ、経済正常化の進展や商品価格の上昇圧力および企業による価格転嫁の動きが予想されるなかでは、先行きの米国の物価や名目長期金利に上昇圧力がかかりやすいとみている。
テクニカル面においては、米10年債利回りは200日移動平均線程度まで下落したあとに反発の動きを見せており、FRBの制御不能な米長期金利の急上昇によるリスクオフ(ゴルディロックス※の変調)や米10年債利回りが200日線を明確に割り込む動きにならない限り、先行きの日米金利差拡大を背景に緩やかな円安ドル高基調は維持されるとみる。
※ゴルディロックス:適温相場のこと。
一方、今後のドル安円高圧力としては、日本のワクチン接種の加速やそれに伴う株式市場への資金流入などが挙げられる。
ワクチン接種が先行している欧米と比較し、出遅れが目立っている日本でのワクチンの接種が進めば、株式のグローバルアロケーションも含めて日本に海外の資金が流入することでドル安円高圧力がかかりやすくなるとみている。その場合は、株高と緩やかな円高が併存し、ドル建て日経平均が円建て日経平均をアウトパフォームすると想定している。
中村 貴司
東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
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