「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。」……2500件以上の家賃滞納トラブルを解決してきた、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。同氏は書籍『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)のなかで、その悲惨な実態を明かしている。
金銭面も、労力的にも…賃貸経営のとんでもないリスク
ところが当然ながら、法的手続きにもそれなりの費用がかかります。それでようやく滞納者を追い出すことができたとしても、滞納分の回収は残念ながらほとんどできません。「支払え」という判決は下しても、裁判所は相手からお金をもぎ取ってはくれないのです。
だったら財産を差し押さえればいいと考えるかもしれませんが、家賃滞納するような人の銀行口座に預金残高が潤沢にあるということは、ほとんどありません。むしろ他にも借金があり、自転車操業になっているケースが大半を占めるのです。
差し押さえされては困るほどの蓄えがある人は、そもそも家賃滞納などしないでしょう。失うものがないからこそ、家賃滞納ができると言ってもよいのではないでしょうか。
つまり、手間と費用をかけて差し押さえの手続きをしたとしても、滞納賃料の回収はあまり望めないということです。
家賃がきちんと支払われてこその賃貸経営です。家賃滞納されてしまうと、家主はその分の負担を背負わざるを得なくなります。そして司法が極端に賃借人保護に偏っているために、家賃を払わない賃借人を勝手に追い出せない、簡単に追い出せない、滞納分の回収ができづらい、そのようなリスクも背負うのです。
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員。30歳で生後6か月の長男を抱えて離婚、働きながら6年の勉強を経て2001年に司法書士試験合格。2006年に独立、2012年に事務所を東京へ移転し、2024年5月よりコンサルティングと情報発信を軸に現職へ。家主側の訴訟代理人として家賃滞納の明け渡し手続きを延べ3,000件近く担当し、現場重視で滞納者の再出発にも伴走する“賃貸トラブル解決のパイオニア”として知られる。「住まいは生きる基盤」を掲げ、“人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活”を提言。全国賃貸住宅新聞での長期連載をはじめ、現代ビジネスなど各種媒体に寄稿し、年間60回超・累計700回超の講演で実務と制度の接点をわかりやすく伝えている。著書に『家賃滞納という貧困』、『老後に住める家がない!』、『不動産大異変』、『あなたが独りで倒れて困ること30』(すべてポプラ社)、『死に方のダンドリ』(共著、ポプラ社)などがある。
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