2000年以降、世界の「金」需要は年間「4000トン」!
金の総需要は、21世紀に入ってからほぼ一貫して年間4000トン前後で動いていました。これは図表2のグラフが示すとおりです。
ここで興味深いのは、4000トンを下回るか、上回るかは公的準備需要がマイナス(つまり、払い出し)か、プラス(積み増し)かに依存していたことです。2009年までは、公的準備は毎年需要がマイナスになっており、総需要も4000トン以下で推移していました。
逆に2010年以降は、公的準備需要が毎年プラスで、総需要も4000トンを超えています。この点については、総需要量を示さず、宝飾品、投資用、その他工業用、公的準備の4項目をそれぞれ折れ線で示した図表3のほうが読み取りやすいでしょう。
宝飾品需要とその他工業用需要がやや減少気味、投資需要がかなり顕著に増加気味で、この3項目を合わせるとほぼ横ばいです。
総需要が4000トンを超えて伸びつづけているのは、公的準備需要がマイナスからプラスに転じたからだとわかります。まだご記憶の方も多いでしょうが、2009年はアメリカのサブプライムローン・バブルに端を発した国際金融危機がどん底まで深刻化した年です。その年を境に世界中の中央銀行が金準備を増やすようになったわけです。
世界中の中央銀行や国際協調金融機関は、上っ面のコメントでなんと言おうと、これからはしっかりとした価値のある実物資産を溜めこんでおく必要があると感じているのでしょう。
あいまいな4番目の分類に話を戻しましょう。ほぼ確実に言えることは、このふたつの中では、その他工業用の重量のほうが、所在不明の重量よりかなり大きいだろうということです。
現在、世界中で毎年400トン前後の金が工業用に消費されています。もう少し細かく見ると、2007年に478トンでピークを打って、2010年にもう一度461トンという高水準に達してから後は、減少気味です。2014年以降は300トン台前半にとどまっています。
その他工業用をさらに細かく分類すると、電子部品用が約7割、歯科医用が約1割、それ以外の工業用が約2割です。電子部品用の金消費量は電子機器が急激に市場を拡大した1980年代に急上昇しましたが、その後は顕著な増加も減少もなくほぼ横ばいです。
それ以外では、もともとあまり大きなシェアではなかった歯科医用の消費量が趨勢的に低下しています。最近は、あまり入れ歯に金の冠をかぶせている人を見かけなくなりました。
つまり、1990年以降の過去30年間だけでも、大まかに言えば(400×30で)約1万2000トンの金はその他工業用に消費されていたわけです。それより前はどうでしょうか。