超高層の「不都合な真実」から目を背けてはいけない
巨大地震への不安が脳裏をよぎります。震災時には自衛隊が出動するとはいえ、単発の火災への消火、救援活動が維持できるでしょうか。
東京都内に限ってみても、超高層マンションは441棟、約14万戸で人びとが暮らしています(2018年10月末現在)。東京消防庁のポンプ車、はしご車、化学車、救急車、救助者などの消防車両は約1,900台。「高さ」に強いヘリコプターは8機。海や川から災害に対応できる消防艇は10隻しかありません。
巨大地震が起きると超高層マンションは、ライフラインが止まり、孤立します。タワーマンションの耐震性能は高く、倒壊の恐れはないとされていますが、「ゆっくり、大きく、長い時間」揺れます。
超高層建築のプロ、橋本友希氏は、著書『タワーマンションの真実』(建築画報社)に次のように記しています。
「ガタガタと揺れて食器棚から食器が飛び出すという状況よりも、柱が上下に変形することで、比較的小さいと思われる地震でも床が少し傾き、食器棚自身が倒れる危険性の方が高くなります。そのため、食器棚や家具を天井や壁などに強固に固定する必要があります」
「傾き」に対する「滑り」や「落下」の防止が先決だといいます。「地震時の建物外部周辺は、必ずしも安全とはいえません。ガラスやタイルの落下など生命に危険がおよぶことも考えられます。むしろ建物内に留まる方が安全です」
もう一つ、孤立化を招く要因があります。地震による地盤の液状化現象です。液状化によって道路は泥沼と化し、建物は傾き、下水道管が浮き上がったりします。交通は途絶します。
東京都は、2013年に「東京の液状化予測図」を発表しました。これを見ると湾岸エリアがいかに「液状化の可能性が高い地域」であるか一目でわかります。
東日本大震災の発生直後、30階、40階の住民が重たい水や食料をリュックに背負い、全身汗まみれになって階段を昇り降りしている姿がメディアで報じられました。
若くて元気な世代はいいけれど、高齢者や子どもはどう対応すればいいのか。超高層の「不都合な真実」に耐えられる準備と覚悟が住民にも行政にも求められています。
山岡 淳一郎
ノンフィクション作家
東京富士大学客員教授
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