(写真はイメージです/PIXTA)

住人が普通のマンションよりも多いタワーマンションでは、火災や地震に対する対策がより重要になります。作家の山岡淳一郎氏の『生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて』(岩波新書)より、タワーマンションが抱える問題について一部抜粋・編集し、解説します。

タワーマンションの設備の複雑さが招いた二次被害

日本でも超高層の火災は起きています。

 

1996年に広島市中央区の20階建てのマンションの9階で火事が起き、バルコニーの目隠し用のアクリル板などを伝って干していた洗濯物に燃え移り、最上階まで延焼しました。この火災以降、外壁に燃えにくい部材を使用することが徹底されています。

 

ただ、その後も高層建物での火災は増えています。東京消防庁の「高層化する建築物における防火安全対策」によれば、超高層の建設が本格化した2000年代に入って、15階建て以上の建築物の火災は増加し続けています。2007年からわずか5年で倍増しているのです。

 

出所:東京消防庁 高層化する建築物における防火安全対策
[図表]15階以上の建築物の火災件数 出所:東京消防庁 高層化する建築物における防火安全対策

 

2015年3月には、東京都千代田区の25階建て高層複合施設の20階住戸から火が出て、70平米を焼き、3人が負傷しました。

 

低層階の保育園にいた大勢の園児の避難で、あたりは騒然とした雰囲気に包まれます。火災はポンプ車約40台と、東京消防庁装備部航空隊のヘリコプター1機が出動し、約3時間後に消し止められました。

 

東京消防庁のはしご車は30メートル級と40メートル級だけです。20階には届きません。消火活動は、住民たちが日ごろの防災訓練どおりに初期消火に努めて火元の延焼を食い止め、駆けつけた消防士にバトンタッチされました。消防士は、非常用エレベーターで20階に急行し、地上の送水口に接続したポンプ車の水を受けて火を消したのです。

 

翌2016年2月、埼玉県所沢市の31階建てマンションの15階で出火しました。火元の82平米の住戸を全焼し、約5時間半後に消し止められています。

 

負傷者は火元の夫婦だけで命に別状はありません。消火に長い時間がかかったのは、消防士の「失敗」のためでした。

 

消防士がポンプ車のホースを地上の送水口につないだのはいいのですが、上層階へ水を送る口ではなく、地下2階の住民用トランクルームに送水する口でした。

 

1時間半にわたって130トンの水が地下2階に放水されたからたまりません。トランクルーム490平米が浸水してしまいました。超高層マンションの設備の複雑さが招いた二次被害といえるでしょう。
 

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