(※写真はイメージです/PIXTA)

航空機ファイナンス市場における最新動向をはじめ、エアライン与信分析データ、機材鑑定評価、航空機材取引価格データ、オーダーメイドアドバイザリーサービス、航空機投資イベントを提供する世界的企業、Ishkaが提供するオリジナルレポートです。今回は、航空機の価格とリース料の推移について解説します。

新型コロナ禍、事実上すべての航空機種で市場価値低下

新型コロナウィルスのパンデミック以来、中古20年ビンテージ機材は、機材価値の調節を繰り返し、ようやく“底打ち感”に達しつつあるように思われると、Ishka鑑定評価チームは説明する。それでも、若いビンテージ機材は引き続きストレスにさらされている。

 

新型コロナ禍、航空機の移動が広範囲に中断され、事実上すべての航空機種で市場価値は低下。Ishkaのアドバイザリーチームによると、古いワイドボディ機の市場価値は45%~50%の下落が見られ、よりパフォーマンスのよい737-800やA320などのナローボディ機は15%~20%の下落が見られた。対照的に若い機材や新造機は、2020年の1月と比較し、約10%~15%の落ち込みであった。

 

この数ヵ月で、多くの航空機種の市場価値の下落率は鈍化しているように思われる(下記グラフ参照)。

 

Ishka分析リポートチームとアドバイザリーチーム責任者であるEddyPieniazekは、下落の鈍化は、危機のはじめに記録された機材価値の急激な下落が起因する一方、一部の航空機種においては、自然淘汰され落ち着いてきたと言う。

 

「ある時点で、一部の航空機の価値が下がらない“底値”がある、これは、パートアウトの価値に達したか、もしくは投資家が単に航空機を取引したがらないポイントに達した可能性がある」と弊社のアナリスト、Pieniazekは説明する。

 

「特に、一部の若い航空機の場合、投資家は、航空機を売却して損失を受け入れるのではなく、保管して市場の好転を待つことを好むかもしれない」

 

一部の古い航空機の場合、単純に航空機のエンジンとコンポーネントの一部が残存価値となる。20年以上のビンテージの一部はすでにこの底値に達している可能性があるが、その他一部の航空機はまだ、そこまで達しておらず、それらの機材価値は市場の需要回復の兆候なしには落ちこみ続ける可能性がある。

パフォーマンスが低かったのは、大型ワイドボディ機

多くの航空機価値は、この15ヵ月間に多かれ少なかれ落ち込んだ。最も深刻な下落は、双通路型機であった。危機開始以来の一例として、2010年ヴィンテージA330-300の値は半減し、2020年1月の4,700万ドルから2021年5月は2,200万ドルに落ち込んだ。同様に、2010年ヴィンテージB777-300ERの値も同じ期間に半減した。Ishkaリサーチによると、この航空機タイプの値は、7,300万ドルから3,450万ドルに落ち込んだ。多くの航空機タイプでは、30%から40%の間での下落が観察されている。

 

弊社でも指摘した価値の下落は、弊社がロンドンで開催したコンファレンスにおいて、他の鑑定評価会社によっても反映されていたことがわかった。ドイツ格付け会社Scope Ratingsは、30年間にわたる航空機の市場価値データサンプルを分析し、航空機の価値が新型コロナパンデミック発生以来、実質的に全航空機種にわたり、全体で平均32%の下落であったことを発見。

 

同研究によると、ワイドボディの値は、平均44%の落ち込みで、一方、パンデミック禍、最もパフォーマンスが高い資産であったのは、貨物機であり、逆にパフォーマンスが低かった機種は、A380、A340、B747などの大型ワイドボディ機であった。ScopeRatingsのディレクターHeleneSpro氏の説明によれば、これらの大型ワイドボディ機を除いたとしても、残りのワイドボディ機の値は、平均39%の落ち込みであったと強調している。

 

しかし、パンデミック開始時に急速な価値の下落があったにも関わらず、さらなる“ステップダウン”は続いた。また、パンデミックは長期にわたる有事となり、市場回復のペースは2020年から2021年にかけて期待を裏切る結果になるかもしれないと言う認識もある。以下のグラフは、2020年1月から2021年5月までのナローボディ、ワイドボディ、およびリージョナル機の現在の市場価値(CMV)と市場リース料(MLR)を示す。Pieniazekは、航空機の市場価値が30%~40%落ち込むと、投機的な投資家は魅力的なエントリーチャンスを求める可能性があると強調。

 

それをきっかけに、市場がすぐに回復し始めるであろうことを期待したが、航空機の価値はさらなるストレスに対して、脆弱なままであると警告した。需要の根本的な回復の推進力は、ワクチンの展開スピードと旅行制限の緩和である。これらが加速し続ければ、旅行需要は高まる可能性があり、特定の航空機価値の回復をも促進する手立てになるかもしれない。

 

2024年もしくは2025年までにナローボディとリージョナル機の需要が拡大すれば、その期間に適正なバランス市場が戻る見込みがある一方で、ワイドボディ機の回復は2024年もしくは2025年になるであろうと、Pieniazekは追記している。さらに、一部の航空機はある程度の回復を示すが、その他航空機は、運航状況や航空路ネットワークの変化により、より恒久的な価値の低下に直面する可能性がある。

 

ワイドボディの市場価値推移 期間:2020年1月~2021年5月
ワイドボディの市場価値推移
期間:2020年1月~2021年5月

 

ワイドボディの市場リース料推移 期間:2020年1月~2021年5月
ワイドボディの市場リース料推移
期間:2020年1月~2021年5月

 

ナローボディ、リージョナル機の市場価値推移 期間:2020年1月~2021年5月
ナローボディ、リージョナル機の市場価値推移
期間:2020年1月~2021年5月

 

ナローボディ、リージョナル機のの市場リース料推移 期間:2020年1月~2021年5月
ナローボディ、リージョナル機のの市場リース料推移
期間:2020年1月~2021年5月

Ishkaの見解

パンデミックの結果、航空機の価値は全ての機種で下落した。一部航空機種では、他機種よりもはるかに迅速に回復はしている。鑑定士は、最も若い効率的な機種の回復が一番早く、Covid以前の値を越える可能性さえあると推測する。多くの鑑定士は、回復に適した機種は、neos, Maxs, B787s, A350sのようであると認める。

 

ただし、魅力的な価格設定による売り出しもしくは貸出し可能な航空機は、一部の新興エアラインに対し、A330のように魅力的に映るという事例もある。Pieniazekは、価格と汎用性があることを理由に、一部の航空会社はナローボディ機の代わりにワイドボディ機の使用を検討しているところもあると言う。そのため、A330は「市場の需要を刺激する可能性がある」と思われる。しかし、彼は、より大きなB777のような他のワイドボディ機の需要を生み出すことは困難であると注意を向ける。

 

また、いくつかの古い航空機種は、市場が回復し、価値が一定程度安定してきた際、恩恵を受けるであろう。他のワイドボディ機種は、パンデミックから抜け出す際、運航先を見つけるのに苦労し、また航空会社がフリート合理化を目指すため、価値の回復を見込めない可能性がある。航空機を引退させることに、投資家は「待機モード」にあるが、スペアパーツの需要が少ない中、現在の市場で古い航空機を引退させたいという投資家の要望は限られており、投資家が最善の決断をするまで、多くの航空機が待ち構えている。

 

現在保管されている航空機の所有者は、難しい決断を下す必要がある。これらの投資家にとっての選択肢は、航空機をより低いリース料で貸し出すか、航空機を駐機し、需要が戻ってきた際、よりよいリース料が得られることを期待しメンテナンスと保管のコストを支払うことである。

 

 

アナリスト
バリー・デイリー(Barry Daly)

 

注:本記事は英語にて発行されており、日本語翻訳はあくまで参照です。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版記事の補助的なものであるため、英語版が(正)となります旨、ご了承ください。

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