リース会社16社、2020年決算の分析結果
Ishkaはリース会社16社の決算を分析した結果、2019年に彼らが計上した合計の減損4億6,100万ドルが、2020年には485%跳ね上がり27億ドルに達したことを確認した。
リース会社各社は、新型コロナパンデミックに起因する様々な理由により、最終的にリースしている機材の減損を余儀なくされた。主要なリース会社数社は、レッシーである航空会社が破産保護を申請し航空機を返却するか、経営改善のためにリース料を引き下げる状況に直面している。また、航空会社によっては、予定のリース期間終了前に航空機をリース会社へ返却するところも存在する。
これにより、帳簿上の航空機価格が低下し、リマーケティング課題も残った状態となる。利用可能な航空機が突出して多いこと、また運航削減を余儀なくさせられている多くの航空会社の存在も相まって、航空機の残存価値に大きな影響を及ぼしている。Ishkaのアナリストチームは、一部のオフリース航空機の価値がパンデミック開始以来3分の1下がったものもあると報告している。
過去12ヵ月間における最大の減損処理は、古いワイドボディ型機に関連する。一例として、大手リース会社エアキャップは、2020年に10億9,000万ドルの減損損失を記録した。これは主に現行技術の機材であるA330型と777型機に関連しており、Ishkaが調査したリース会社の中では最大であった。同社CFOであるPete Juhas氏は、2020年第三四半期の決算発表で、A330と777の「(リース賃料が)恒久的に引き下げられた」と述べた後、前回の決算発表では、「さらに大幅な減損」は予想していなかったとコメントした。
一方で、近々エアキャップと統合するGEのリースユニットであるGECASは、2019年の7,400万ドルから2020年には5億4,200万ドルの資産減損損失を記録。GECASの「古いリージョナル機」が、正味簿価で会社のポートフォリオの5%を占めており、“潜在的な”将来の減損リスクがあるかもしれないことを格付け会社Fitchは注意喚起している。
シンガポールを拠点とするリース会社BOCアビエーションは、2020年に1億900万ドルの減損を計上。過去3年間の平均400万ドルから増加した。同社CFO Steve Townend氏は、これは「主にワイドボディ型機が起因している」と語っている。
これとは別に、中古機に焦点を当てたリース会社のエアキャッスルは、2020年11月30日までの9ヵ月間で「13機のナローボディと5機のワイドボディ」に関連する3億ドルの減損を発表。これは、過去3年間の平均値2,900万ドルから934%の増加であり、さらにもう一期分の数値が新たに追加される予定である。
減損の引き金は「機材の早期返却」
アイルランドを拠点とするリース会社フライリーシングは、2020年に1億1,500万ドルの減損を記録し、過去3年間平均の700万ドルから増加した。弊社の認識では、この減損の引き金になっているのは、フィリピン航空である。「フィリピン航空より早期に返却される」と予想される2機は、機齢7年のA330-300。「かなりの金額となる1億600万ドル」の減損が含まれる。
シンガポールを拠点とするリース会社Avationは、2020年に8,000万ドルの減損損失を記録し、そのうちの1,890万ドルは早期に返却されたヴァージンオーストラリアの11機ATRとFokker-F100の2機であった。また以前、トーマスクックにリースしていたA321の2機に関連する950万ドルの減損もあった。
クライシス=「航空機資産が広い範囲で脆弱」との意味
注意が必要なのは、全ての減損処理がワイドボディ型機に関連しているわけではないことである。軟調な民間航空機市場は、実質、全ての航空機資産の残存価値に影響を与えている。カナダを拠点とするリージョナル機の貸し手であり航空会社を所有するホールディングカンパニーChorus Aviationは、2020年に5,500万ドルの減損を記録し、4年ぶりに損失を計上した。同社はリース終了に起因する13機のオフリース機の転貸を積極的に行っており、それにより2020年に減損を計上する結果となった。
同様に世界最大のリージョナル航空機の貸し手であるノルディックアビエーションキャピタル(NAC)は、過去3年間の平均300万ドルの減損計上から2020年には5,800万ドルに特別損失が膨らんだ。NACは直近、チャプター11の可能性もしくは他のオプションを模索していると発表している。
また、米国のFortress Transportation and Infrastructure(FTAI)は、2020年に「31機以上の航空機とエンジン」で3,400万ドルの減損を記録。過去3年間の平均200万ドルから増加した。FTAIのCEO Joseph Adams氏は、「これら特定の資産が、このサイクルで最も低い価値になると予想されるレベルまで評価減することを選択した」とコメントしている。
例として、ここでは5年ビンテージ機材価値を示す。以下のテーブルは、機材クラスが幅広く提示されているが、2020年1月からのオフリース機材の変化率および機材価値を示している。機材市場価値は、平均23%ダウン、リース料は31%の落ち込みとなった。
一部リース会社は減損処理で落下
すべてのリース会社が悪化しているわけではない。SMBC アビエーションキャピタル、アビエーションキャピタルグループ(ACG)、ペンブローク・エアクラフト・リーシング(Pembroke)は、2020年に2019年よりも低い減損計上であった。SMBCは、2020年に1900万ドルの減損を計上し、過去3年間の平均2,800万ドルから減少している。ACGは、過去3年間の平均1億2,200万ドルから減少し、8,400万ドルを計上。Pembrokeも、また、過去3年間平均の1億4,000万ドルと比較して、2020年には1億3,200万ドルの減損計上となった。
上記リース会社3社は、ナローボディ機、主に737型機とA320型機に焦点を当てており、ワイドボディ機はわずかな所有である。
一方、エアリースコーポレーション(ALC)は、過去4年間、減損計上の記録はない。直近の決算発表で、CEOのPluger氏は、所有機体の平均機齢が約4年であることを考えると驚くことではないとコメントしている。
Ishkaの見解
航空機リース業界において減損処理を行うことは、かなり日常的なことである。しかし直近の減損規模は、コロナ危機が航空機価値に与える影響を浮き彫りにした。例えば、IAGとルフトハンザは、2020年に合計27億5,000万ドルの減損を報告している。これは主に、IAGの退役機材と保管されている機材、そしてルフトハンザはまた「4つのエンジン搭載機材」(ワイドボディ型機)に関連する。
2020年は多くの航空会社にとって困難な年であり、当然のことながら、航空機を早期にリース会社に返却することを選択することが可能であった航空会社によって減損は引き起こされた。Ishkaのアナリストチームの調査によると、多くの資産の残存価値は引き続き低下している。その結果、破綻または早期の機材返却から航空機を受け取ることになったリース会社は、特に古い双通路型機で、(リース無しでの)機材価値が劇的に落ち込んだ。
2020年のリース会社による減損処理の主な要因は、ワイドボディ機であったことは明らかである。Ishkaが以前指摘したことがあるように、B777やA330を含む現行技術のワイドボディ機は、短期リース終了の到来、一部の航空会社の破綻、また新しい技術の航空機へシフトが始まっていることにより、パンデミック前から需要の落ちこみは指摘されていた。今回のパンデミックはただ単に今回のこの状況を加速させただけであり、リース会社は航空会社の航空機選別の劇的な変化が起こるであろう渦中の矢面に立たされている。
市場の回復のタイミングがいまだ不確実性が高いことを考えると、将来起こり得る減損は、より早期のリース返却にかかっている可能性が高い。リース会社にとって痛ましいことは、いくつかの大規模な航空会社の再建が、2021年の間にさらに多くの減損処理をもたらすかもしれないことである。
アナリスト
バリー・デイリー(Barry Daly)