「国債を買う=国民のオーナーになる」ということ
同じ債券でも、社債ではなく、国が発行する国債はどうでしょうか。この場合も間接的に
「人間のオーナー」になります。
例えば、日本政府が発行する日本国債に投資した場合、日本政府は集めた資金を使って、国民のために様々な事業を行います。道路や橋などを作る公共事業や災害復興事業、直近ではコロナ禍で疲弊した事業者を支援する「Go to キャンペーン」などが典型例です。これらの事業を通じて、多くの人たちが働く場を得て仕事をし、社会的価値を生み出しているのです。つまり、「国債を買う」ということは、投資家であるあなた自身を含めたその国の「国民のオーナーになる」ということになります。
「人間のオーナーになる」という言い方は少々どぎつく聞こえるかもしれませんが、要するに、「価値を生み出す人間の営み」に投資をすること、もっと言えば、「お金を出すことで、働く人たちと一緒に価値を生み出す」ことをこう表現しているのです。
株式や社債のほかにもうひとつ、「人間のオーナーになって社会的価値を生み出す」という条件に当てはまる投資対象があります。それが不動産です。
不動産投資…「入居者保証システム」のトラブルに注意
不動産とはここでは土地・建物を指しますが、例えば、あなたが土地を買って、ワンルームマンションを建てたとします。すると、各部屋に入居した人たちはそこを生活拠点にして仕事に行ったり、学校に通ったり、あるいは年金をもらったりしながら、オーナーであるあなたに家賃を支払います。これによって結果的に、人間のオーナーになって社会的価値を生み出すことになっていくのです。
ただし、不動産投資については、人口構造の変化やコロナ禍等の不測の事態によって需給変動リスクが高まる可能性があることに加えて、近年は入居者保証システムのあり方などを巡ってトラブルも多発していますので、十分に注意することが必要です。
FX取引仲介会社の社長が語った「FXで儲ける」秘策
それでは、FX投資はどうでしょうか。FXなどの外国為替取引は、元々は外国と貿易をする会社が決済をしやすくしたり、為替変動リスクを小さくしたりするために生まれたもので、簡単に言えば「お金でお金を売り買いする」特殊な取引です。
つまり、そもそもが株式や債券のような「人間のオーナーになるための投資」とは全く目的や性格が異なるのです。それでも、貿易会社であれば外国と製品・サービスを取引することで社会的価値を生み出しているわけですから、それは「人間のオーナー」につながる投資と言えるかもしれません。ですが、貿易業務とは縁もゆかりもない一般の個人投資家が行うFX取引は、「人間のオーナー」になることとは全く無関係のものだと言っていいと思います。
実際、FX取引では短期間に売買を繰り返して利ザヤを稼ぐことが、利益を上げる主な手段になっています。ここでは長期保有という考え方は存在しません。さらに言えば、筆者はこの業界に身をおいて20年以上経ちますが、「FX投資で儲け続けている」という人にほとんど出会ったことがありません。
プロの投資家でも手痛い目に遭うのが日常茶飯事の極めてリスクの高い投資対象のひとつなのです。丁半博打と言ったらさすがに言い過ぎかもしれませんが、ここに参加する人は「投資家(インベスター)」というよりも「投機家(スペキュレーター)」だと筆者は思っています。
これは本当の話ですが、あるFX取引仲介会社の社長が「FXで儲かる秘訣を教えてください」と聞かれたとき、こう答えました。
「あなた自身が取引仲介会社を作ることだ」
取引業者はあなたが取引を行う度に手数料を取るからです。あなたが儲けようと、損をしようと、取引が行われる度に確実に手数料が入ってくる仕組みになっているのです。だから、取引仲介会社を作るのが一番確実だというわけです。
もちろん、FX投資をやるかやらないかは個人の自由です。しかし、せっかく大切なお金を使って投資をするなら、人が働いて価値を生み出すことにつながるものにしたいと思いませんか。投資も社会を支える大切な人間の営みのひとつであり、それは人々が豊かで幸せに暮らすことに貢献するものであるべきだと、筆者は信じて疑いません。
◆まとめ◆
「人間のオーナーになって価値を生み出す」ものが真の投資である!
市川 雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長
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