複数銘柄への投資の際、忘れてはならないことがある
「1つのかごに卵を盛るな」という投資の格言があります。
かごの中にあまりたくさんの卵を入れて持ち運ぶと、万が一、転んだりした時にほとんどの卵が割れてしまう危険性があるので、「かごを分けましょう」という意味です。
これを株式投資に当てはめて、考えてみましょう。あなたが今、投資資金を100万円持っていたとします。
まず、100万円全額を1つの銘柄に投資する場合について考えてみましょう。あなたが自動車好きで、クルマのことに詳しいので、自動車メーカーA社の株を買ったとします。A社はこれまで順調に成長してきた人気銘柄で、今期も好決算が見込まれ、増配も予定しています。この時点では、とても良い選択に見えました。
ところが、その直後、A社のある車種が大事故を起こしました。原因を探ると、ブレーキ機構に重大な欠陥が見つかり、運輸当局から大規模なリコール(製品回収)命令が出る事態に発展しました。このクルマはA社の看板車種で、満を持してフルモデルチェンジしたばかりだったこともあり、新聞やテレビでも大きく取り上げられ、株式市場も大混乱。A社の株価は連日ストップ安で値が付かず、結局、3割も下落してしまいました。当然、この銘柄だけに投資していたあなたは、大きく資産を減らすことになってしまいました。
では、同じ自動車メーカーの株式に投資する場合でも、例えば、5銘柄(自動車メーカー5社)に20万円ずつ分けて投資した場合はどうでしょう。この場合、たとえA社の株価が下落しても、資産の減少は限定的です。むしろA社のライバルであるB社やC社の株価が上がって、投資全体ではほとんど損失を出さずに済むかもしれません。場合によっては、トータルではプラスになる可能性すらあり得ます(事故がなく、自動車全体の販売が好調であれば、言わずもがなの結果が期待できますが)。
これが「分散投資」の基本的な考え方です。しかし、これでリスク対策は万全かというと、そうとは言い切れません。このケースには、大きな問題があります。それは、5つの銘柄が全て自動車メーカーという同じ業種である点です。
欠陥車のように特定のメーカーの問題ではなく、例えば、外国為替が急激に円高に触れたり、貿易摩擦が激化して輸出規制や関税引き上げが議論されたりしたら、その影響は自動車業界全体に及びます。最悪の場合、投資した5つの銘柄全ての株価が下落する可能性も否定できません。
分散投資を行う場合は、こうしたことにも気をつけなくてはなりません。これは株式投資の銘柄選びだけでなく、他の金融商品についても同様です。同じ業種だけ、同じ国だけ、同じ通貨だけなど、1つのものに偏る投資は当然、安全性という面でのリスクは大きくなります。
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