(※写真はイメージです/PIXTA)

有名人の不倫がメディアで取り上げられ、時に犯罪者のような扱いをされますが、姦通罪は昭和22年に廃止されたため、不貞行為は刑法上の犯罪に該当しません。しかしながら、民事上の損害賠償(慰謝料)請求の対象にはなります。どのような場合に慰謝料が認められるのでしょうか。また、不貞行為は離婚事由になりますが、不貞行為をした配偶者からの離婚請求は認められるのでしょうか。落語『紙入れ』の旦那、女房及び新吉を例にして解説します。女房と新吉は既に情交関係をもっていたことを前提にします。※本連載は、弁護士・森章太氏の著書『落語でわかる「民法」入門』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「不貞パートナーからの請求」でも離婚は成立するのか

【離婚請求】

(1)有責配偶者に対する請求

夫婦間で合意できれば離婚は成立しますが、不貞配偶者(有責配偶者)が離婚に同意しない場合には、離婚請求が認められるのかが問題となります。

 

配偶者が不貞行為をすることは離婚原因になります(770条1項1号)。不貞行為に限定されており、慰謝料請求の対象行為(前項の〔3〕)よりも範囲は狭いです。

 

『紙入れ』の場合、旦那は女房に離婚を請求することができます。仮に女房と新吉が性交には至らず、手を握った止まりだったのであれば、離婚原因となる不貞行為には該当しません。

 

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【770条(裁判上の離婚)】

1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

1号 配偶者に不貞な行為があったとき。

5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

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(2)有責配偶者からの請求

それでは、有責配偶者からの離婚請求は認められるのでしょうか。

 

有責配偶者からの請求の場合、770条1項の1号には該当せず、5号(婚姻を継続し難い重大な事由)に該当するかが問題となります。

 

判例は「有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできない」、「相手方配偶者が離婚により被る経済的不利益は、本来、離婚と同時又は離婚後において請求することが認められている財産分与又は慰藉料により解決されるべきものであるからである」としており、有責配偶者からの離婚請求であっても認められることがあります。

 

なお、未成熟子が存在する場合であっても、有責配偶者からの離婚請求を認めた判例もあります。

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落語でわかる「民法」入門

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