(※画像はイメージです/PIXTA)

相続の際、通常は親から子へ、子から孫へと世代順に資産を受け渡していくことになります。しかし、資産額が大きいなど一定の条件が重なると、子を飛ばして孫へ、子がいない場合は、きょうだいを飛ばして甥姪へ相続させたほうが、相続税額が低くなることがあります。具体的にはどのようなケースが該当するのでしょうか。IPAX総合法律事務所の工藤敦子弁護士が解説します。

「世代飛ばし」による2割加算と節税効果

子に遺産を相続させれば、通常の相続税を払えばすむところ、子を飛ばして、孫に遺贈すると、2割加算された相続税がかかります。しかし、前者の場合、子が相続したときと、その子から孫が相続したときと、2回の相続税の支払いが必要になります。2割加算されたとしても、相続税の支払いを1回にした方が相続税の総額が低くなり、総合的にみると節税になる場合があります。

 

一般論として、遺産の額が大きい場合には、世代飛ばしをすることによる節税額が大きくなる傾向にあります。しかし、第一次相続から第二次相続までのあいだに期間があり資産の費消が予定される場合や、様々な相続税減税の制度の利用により、世代飛ばしをしない方が節税になる場合がありますので、個別の事情や減税制度を検討したうえで、世代飛ばしをするか否かを決定することをお勧めします。

 

下記は節税となる代表的な例です。

 

【子を飛ばして孫に相続させる場合】

 

◆被相続人から、子→孫へと順次相続すると…

 

遺産総額が3億円で、被相続人に子ひとり、孫ひとりいる場合、子への相続時の相続税は、

 

{(3億円-基礎控除額3600万円)×税率45%}-控除額2700万円

=9180万円

 

となります。

 

もし子がその資産2億820万円を費消せずに死亡して孫が相続すると、相続税は、

 

{(2億820万円-基礎控除額3600万円)×税率40%}-控除額1700万円

=5188万円

 

となり、子と孫の相続税は、「9180万円+5188万円=1億4368万円」になります(ここでは、簡略化のため、子に他の財産がないことを前提にしています)。

 

◆被相続人から、子を飛ばして孫へと相続すると…

 

3億円の資産を被相続人から孫に直接相続させた場合、相続税は子が相続した場合、相続税額である9180万円の2割増しとなり、「1億1016万円」です。このように被相続人からの相続時の相続税は孫が相続するほうが高額になりますが、子から孫への相続が発生しないので、総合的に考えると、3352万円の節税になります。

 

◆孫を被相続人の養子にしたら…

 

孫を養子にしても、孫への相続税は2割加算となります。しかし、孫を養子にすると、法定相続人が1人増えるので、基礎控除額が600万円増加します。そのため、上記の例では、

 

{(3億円-基礎控除額4200万円)×税率45%}-控除額2700万円=8910万円

相続税額8910万円×1.2=1億692万円

 

となり、養子にしないで孫に直接相続させる場合よりも、さらに324万円の節税になります。

 

【兄弟姉妹を飛ばし甥姪に相続させる場合】

 

◆きょうだいを飛ばして甥姪に相続させると…

 

法定相続人であっても兄弟姉妹の相続税は2割加算になります。そのため、いずれ甥姪に引き継がせるのであれば、兄弟姉妹を飛ばして甥姪に相続させたほうが、相続が1回ですむぶん、節税になります。

 

◆甥姪を被相続人の養子にすると…

 

甥姪と養子縁組をすれば、養子(孫ではない)への相続となり、2割加算の対象外となり、上記の場合よりもさらに節税になる場合もあります。しかし、甥姪を養子にすると、兄弟姉妹は法定相続人ではなくなります。養子にする甥姪よりも兄弟姉妹の数の方が多い場合には、法定相続人の数が減り基礎控除額が減額され、かえって相続税が多額になってしまう場合もありますので、十分な検討が必要です。

 

 

工藤 敦子
IPAX総合法律事務所 カウンセル弁護士

 

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