【関連記事】相続した古い空き家、売却すれば「3000万円の特別控除」も…適用条件を弁護士が解説
「遺産分割」できないと、さまざまな問題が発生する
遺産分割とは
人(被相続人)が亡くなり、相続人が複数いる場合、遺言がなければ、被相続人の財産は、全て、相続人の共有になります。
この共有財産を、どの相続人がどの財産を引き継ぐかを決めることを「遺産分割」といい、そのための協議を「遺産分割協議」といいます。
相続財産の凍結
遺産分割協議がまとまらず、遺産が共有されたままだと、その処分には、相続人全員の同意が必要となり、機動的な処分ができなくなります。
例えば、銀行預金を、葬儀費用や相続税の支払いに使ったり、不動産や自動車などの財産を売却したりしたくても、一人でも反対するとできません。全相続人の同意が得られず、相続財産を利用できない状態のことを、俗に「相続財産の凍結」といっています。
近隣に迷惑をかけるおそれ
例えば、相続財産の中に空き家があり、それを引き継ぐ者が決まらない場合、誰もその空き家を管理せずに放置していると、老朽化した建物の倒壊や、育ちすぎた庭木が道路や隣接地に張り出すなど、近隣に迷惑をかけてしまう恐れがあります。
権利の複雑化
遺産分割がなされないまま長期間放置すると、そのあいだに相続人が亡くなって二次相続が起こり、権利関係が複雑になってしまうという問題があります。例えば、相続開始時は、相続人はきょうだい3人であったが、その後きょうだいが亡くなり、その子が相続したとします。各人に3人の子がいた場合、相続人は9人になってしまいます。
さらに放置すれば、さらに増えていくでしょう。代を経ることにより人数が増えるばかりでなく、相続人同士の関係性は希薄になり疎遠になります。行方の知れない者か出てきたり、連絡が取れても、一切協力してくれないという人もいるかもしれません。
そうすると、例えば、空き家となった不動産を処分しようにも、処分ができないというリスクがあります。明治時代から放置され、現在、相続人が100人を超えてしまったという例もあります。
協議がまとまらない場合は「遺産分割調停」を利用
当人同士では遺産分割協議がまとまらない場合、問題が大きくなる前に、家庭裁判所に申し立て、遺産分割調停の利用により解決を図ることを検討しましょう。遺産分割調停とは、家事審判官(裁判官)とふたりの調停委員で構成される調停委員会が、相続人のあいだに立ち、中立公正な立場から、各相続人の言い分を聞き、具体的な遺産分割方法を提案するなどして、遺産分割協議をまとめるようにする手続です。
調停を使うメリット
遺産分割調停では、関係がこじれてしまい、相続人間では話し合いをするのが困難な場合でも、直接顔を合わせることなく、調停委員を介して話し合いを進めることができ、また、第三者の視点からアドバイスを受けることができるので、冷静に協議することが可能になります。
調停を進めるコツ
相続人同士の関係性や過去のしがらみなどの周辺事情や、最終的に目指しているゴールなどを包み隠さず調停委員に伝えておくことが、調停を円滑に希望に沿って進めるコツとなります。
不利益な事実でも調停委員に伝え、全体像を理解してもらうことが肝要です。相手方には伝えたくないことは、その旨断って調停委員に伝えれば、相手方には秘密にしておいてもらえます。