部下にいきなり「急ぎの仕事」を頼んだとしたら…
●人は唐突に言われるとストレスを感じる
コミュニケーションにおける「唐突感」をなくすだけで、人間関係の問題による離職率を半分くらい解消できます。一例を挙げましょう。
「ちょっとストレスがかかりそうな仕事があって、それをあなたにやってほしいと思っている。いままとめていて、明日30分使って説明したいけれど、時間をとれるかな?」
このように1日空けることで、相手にストレスなく用件が伝わるのです。
人には、物事を唐突に頼まれるとできなくなるという習性があります。
業務内容や負荷ではなく、唐突感にストレスを感じてしまうのです。
前もって早めに伝えておくことで、相手のストレスは激減します。
もし明日までにやってほしいことをいきなり頼んだら、皆やりたくない分、思わしくない結果になってしまいます。
●何事も事前に伝え、直前にもリマインドする
もしタイムマネジメントに優れているリーダーならば、たとえば3日前に
「○○日までにやってほしい仕事があるんだ。整理してから伝えるから」
と言うだけで、相手のアウトプットの質が10倍ほど違ってきます。社内の面談もそうです。
大切な面談をするときには、たとえば半年前から告知しておきます。
早ければ早いほどいいでしょう。
メンバーに心の準備をする猶予を与えない人が多いのは、「自分は上司だから」と考えてしまっているからです。仕事は部下が自分で考えるものだと思うのでしょうが、それでは仕事の成果が下がってしまいます。
取り組む内容と時期を意識させる。それも、長い時間をかけて行う──。
筆者は、このように唐突感を与えずにメンバーに仕事してもらうことが、チームマネジメントにおいてもっとも大切なことであると考えています。
もしこれをトップやリーダーが実践すれば、皆そのように仕事をするようになります。事前に伝え、直前にリマインドするということに慣れてくるのです。
●唐突感をなくすだけでメンバーとの関係はよくなる
筆者が清掃会社の代表をしていたころ、現場で働いている人たちと本社の人間とのあいだでコミュニケーションが必要だなと思い、月に一度現場を訪れることにしました。そのとき、社内で長く働いてきたメンバーも連れていこうとしました。
雨の日も風の日も現場で頑張っている人たちに会ったほうがいいと思ったのです。
筆者はその本社メンバーに、「来月行きませんか?」と提案しましたが、返事は「忙しいから行けない」とひと言。行きたくなかったからでしょう。
筆者は、なぜ断られたのかを考えました。そして、「1ヵ月前に言われても急すぎたのかもしれない」と思い至ったのです。そこで11月くらいに
「来年の4月から3ヵ月に一度、皆さんと現場に行こうと思うので、予定しておいてもらえますか?」
と伝えるようにしました。これならNoとは言えません。
なんとなく「行きたくないな」「嫌だな」と思っても、先の話だから「まあいいか」となります。そして、時期が近づいてくるとその予定が心に徐々に馴染んできて、結果として「行ってよかった」という感想に変わりました。
あのとき筆者が我慢したことは、「来月」から「半年後」に時期を変えたことだけ。行う内容は変えていません。そこにあった壁は「唐突感」だったのです。
唐突感をなくすだけで、チームのコミュニケーションは格段によくなるはずです。
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