バブル崩壊後に高まったマンション居住者の永住意識
国土交通省が発表した「平成30年度マンション総合調査」では居住者の永住意識は高まっており、平成30年度調査において「永住するつもり」と回答したマンション居住者が過去最高の62.8%(前回調査より+10.4%)となったことが発表されました。
気になる世帯主の年齢ですが、居住者の高齢化が進展し、70歳代以上の割合は22.2%(前回調査より+3.3%)となり、完成年次が古いマンションほど70歳代以上の割合は高くなっており、昭和54年以前のマンションにおける70歳代以上の割合は47.2%であったことが発表されています。
永住意識が増加した背景としては1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月迄の期間は景気の良い時代が続いた。いわゆる「バブル景気」という時代だったということがあります。
バブル景気の時代は、今と違って人口がどんどん増えていて、我が国の国土の面積はこれ以上増えることは絶対にないので、将来土地は足りなくなる、土地の値段は必ず上がり続ける…という「土地神話」がまことしやかに巷に蔓延していたことを覚えている熟年世代の方も多いと思います。
当時は、土地の値上がりが異常で東京の山手線の内側の土地の価格でアメリカ全土が買えるという試算が出るほど日本の土地の値段は高騰していました。
そのような状況の中、マイホームを手に入れようと考えている人たちの多くは戸建て思考でした。「夢の一戸建て」とか「庭付き一戸建て」というのが多くのサラリーマンがマイホーム購入の夢を語るときのフレーズでした。憧れのマイホームとして「庭付き一戸建て」は誰もが叶えたい目標だったのです。
「土地神話」の影響で土地は異常なほどに高騰し、新規に持ち家を購入する一次取得では夢の庭付き一戸建てを購入することが現実には難しいことがわかってきました。
そこで、とりあえずマンションを買ってしばらくそこに住んで、そのマンションが値上がったらそのマンションを売って「夢の庭付き一戸建て」を購入することにしたのです。
マンションを購入する目的があくまで終の棲家ではなく「庭付き一戸建て」を購入する手段になりました。
ところが平成3年頃からバブルが崩壊して景気の後退期に突入しました。
その結果、土地の価格、マンションの価格は一気に下がり、二次取得で夢の一戸建てに買い替えることも不可能になり、夢はバブル(泡)のように消えてしまいました。
買い替えどころかマンションを売却してもローンの一括返済もできず、ローンの残債でマンションに住んでも、所有してもいないのに高金利で借りた住宅ローンの返済は続けなければならいという誰も予想していない状況に陥っていったのです。
進むも地獄、退くも地獄、「仕方がないこのままこのマンションに住み続けよう。」ということから、平成元年以前に建てられた比較的古いマンションでは、永住意識が高くなったという専門家もおります。
永住意識の高まりでマンションの居住者の高齢化が進んでいったのです。
松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表