相続税の目的と税率が高い理由
死亡した人の財産を相続すると、なぜ高額の相続税が課税されるのでしょうか。そこで相続税が課税される目的と税率が高く設定されている理由を紹介します。あわせて、相続税の税率の変遷も紹介します。過去には70%以上の税率で相続税が課税されたこともありました。
■相続税の目的は所得税の補完と富の集中抑制
相続した財産に相続税を課税することには、主に次のような目的があるとされています。
・所得税の補完
・富の集中抑制
所得税の補完とは、故人が生前に非課税の所得や少額の贈与などさまざまな理由で軽減された税について、相続の機会に精算するという考え方です。課税されなかった所得は財産として蓄積されているとみなして、相続財産に課税します。
富の集中抑制とは、相続財産に一定の割合で課税することで、財産が少ない人との格差を緩和するという考え方です。相続税がなければ、財産の多い人は財産を減らすことなく代々引き継ぐことができ、経済的な格差が固定されてしまいます。
■相続税の税率が高い理由
遺産を相続した人は労せずして、あるいは偶然に財産を得たとみることができます。また、一度に多くの財産を得た人は税を比較的負担しやすい立場にあります。これらの理由で相続税の税率が高く設定されていると考えられます。
■相続税の税率の変遷
相続税は戦費調達のため明治38年に創設され、時代の移り変わりとともに役割を変えてきました。
戦前までの相続の制度は現在とは大きく異なるもので、長男が遺産をすべて相続する家督相続が基本でした。戦後、相続の制度は現在のものに近い形に改められました。
その後は、高度経済成長やバブル経済による資産価格の上昇に合わせて、相続税の税率は何度かにわたって改定されてきました。
平成15年の改正まで税率は緩和されてきましたが、平成27年の改正で税率が引き上げられ、同時に基礎控除額が減額されました。死亡した人のうち相続税が課税される人の割合が4%あまりに低下し、富の集中抑制の役割が薄れていたことが背景にあります。