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「もしかしたら、売り上げを抜いてるんじゃないか…」
「お金、ちょっとおかしいんですよ」
「えっ？」
「田中さん、もしかしたら売り上げを抜いてるんじゃないかって……」
予想もしない話に筆者は頭の中が一瞬真っ白になった。まさか。あの田中さんが？
「いや、それは流石にないんじゃ……」
佐山さんは慌てて付け足した。
「ええ、僕もちょっとそれは信じられないんですけど。ただ美容室検索サイトの予約ではカラーとトリートメントだったお客様が、会計はカラーだけってことがこの頃よくあって。田中さんのお客様なんですけど、トリートメントしてるのを他のスタッフが見てたりして……」
「……」
言葉が見つからず、すぐに返答できなかったが、放置するわけにはいかない。
「ちょっと調べてみます」
「すみません、お願いします」
話したいことが話せてホッとしたのか、佐山さんは明るさを取り戻して部屋を出ていった。
筆者は、この話を信じることができずに混乱していた。
筆者が今までにない美容室をつくる、と言ったとき、「面白いです、ぜひやりましょう！」と言って目を輝かせていた田中さんの笑顔を覚えている。開店後ずっと2人で苦労してきて、ようやく事業の道筋が見えてきたのに？ 本当に？ なぜ？
何を信じていいのかわからない筆者は、自分で確かめてみることにした。
