エンジェル投資家(これから事業を始めようとする起業家に対して出資を行う個人投資家)の坂元康宏氏は、「日本の会社員はあと10年で滅びる」と主張しており、起業の重要性について説いています。今回は、創業者が会社を設立してから、上場するまでの資金調節のプロセスについて見ていきましょう。

投資規模が拡大する「ベンチャーキャピタルラウンド」

そうして企業として整っているべきものが揃い、さらに資金を投入すれば一気にシェアが取れるとなったところで「ベンチャーキャピタルラウンド」に移行します。このラウンドは大まかにシリーズA(成長拡大期)/シリーズB(成長安定期)/シリーズC(上場直前期)に分かれます。ベンチャーキャピタルは多くの投資家から集めた資金を束ねて運用していますので、投資規模も大きくなります。

 

一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンターの投資動向調査によると、2020年第4四半期にベンチャーキャピタル(VCとCVC※の合計)は総額546億8000万円を360件の国内案件に投資しています。1件につき平均1億5690万円ですから、エンジェルラウンドと比べると桁が違います。

 

ベンチャーキャピタルが入ってくると、完全に上場までのレールが敷かれます。外部から優秀な人材を招き入れて経営管理体制を盤石にし、収益をどんどん伸ばして黒字経営にまで持って行きます。内部監査やコンプライアンスもきちっと整えて上場に備えます。

 

上場のタイミングを「N」とし、そこから遡って1年前をN–1、2年前をN–2、3年前をN–3......とカウントしていく数え方もあり、上場準備を始めるのはN–3くらいからが理想です。N–2あたりになると出資しているベンチャーキャピタルの顔ぶれを見て「あそこが出資しているならウチも」と勝手にお金が集まってくるので、資金繰りに苦労することはなくなります。そうした盛り上がりが最高潮に達したところで、新規上場(IPO)に至るのです。

 

※CVCとは「コーポレートベンチャーキャピタル」の略で、投資を本業としない一般の事業会社が自己資金でファンドを形成し、ベンチャー企業に出資や支援を行うこと。VCがあらゆる分野のベンチャー企業に投資するのに対して、CVCは本業と関連性がありシナジーが期待できる分野に限って投資することがほとんど(例・自動車メーカーが自動運転技術に活用できるAI開発のベンチャーに投資するなど)。

 

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※本連載では坂元氏が成功する起業家の特徴や、「エンジェル投資家」について解説していきます。

起業するなら「エンジェル投資家」を口説きなさい

起業するなら「エンジェル投資家」を口説きなさい

坂元 康宏

幻冬舎メディアコンサルティング

海外の若手起業家にとって当然の存在でありながら、日本ではほとんど認知されていないエンジェル投資家。若手起業家の元へ足繁く通い、ハンズオンしてきた著者だから見えた成功者の共通点とは。投資家として、起業家として、エ…

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