ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

医療療養型病院に入院すると介護保険の卒業も

介護に直面したからこそ目指した資格が私にはある。旧ホームヘルパー2級(現介護職員初任者研修)は、母を呼び寄せて同居をした初期に取得をした。在宅介護で役に立つと思ったからだ。宅地建物取引士は、近隣に空き家が増えていること、高齢者世帯だった一軒家が売買され新築住宅に変化している現実を多数目にしたことが影響している。ファイナンシャルプランナーは、お金や相続を自分事と感じたからだ。

 

そして社会福祉士は相談援助をいつか必ず自分の仕事とするんだと固く決意したから取得した。いずれも介護をしていなかったら目指していた可能性は低かったと言い切れる。

 

母は認知症と診断されてから10年以上たつので、どう考えても末期だ。子育ては、明日できることが増えていく。介護は、明日できないことが増えていく。心がけているのは、一杯のコーヒーをおいしく飲む。キレイな花に触れる。季節のものやその土地のおいしい物を食べる。そのとき生きている喜びを感じて、ゆとりを持つことを心がける。介護に、特別なことはいらない。

 

病院介護 母:介護保険を卒業か

 

高齢者の1年は重みがある。母は2018年の暮れから、肺炎で入退院を4回繰り返した。症状が回復して退院できても家庭に戻るとなぜか、どんなに食事に気を使ってもむせる、食べないが続き、1週間で再入院、2日で再入院ということがあった。2日で肺炎になるのだ。

 

一歩一歩、老衰が進む。肺炎や骨折などで一気に進む。まるで階段から転げ落ちるように。退院して小規模多機能の通いを利用するが、何度となく現在の症状を電話で伝えられた。酸素量や血圧を伝えられ、病院に連れて行くことができるかの判断を迫られる。

 

急に電話がきてもすぐに駆けつけることはできないし、数値での判断も難しい。電話が怖くなった。医師に病院に連れて行く目安を確認しておくと良い。痰や咳や食事をとらないなど、いつもと様子が変わったとき、酸素量が90以下になったとき、熱が38度以上になったときなど。

 

在宅医療と訪問看護を利用して在宅に戻るか、医療療養型病院に転院するか。私の選択はどちらか。もちろん、有料老人ホームという選択もあるが、家で難しいのであれば病院が安心という気持ちが優先する。小規模多機能には大変お世話になったが、やはり医療的な判断で迷惑をかけてしまった。

 

医師、看護師がいつでも対応してくれる病院にいた方が私も安心できる。医療療養型病院にお世話になることを考え始めている。小規模多機能型居宅介護を解約すると介護保険は一先ず終了。これからは医療保険のお世話になる。医療療養型病院に入院しても在宅に戻れる可能性もゼロではない。いつの日か介護保険を新たに申請する日がくるのか。さぁ、できることをやろう。自滅せず親も家族も幸せになる方法で。


 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

 

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渋澤 和世

プレジデント社

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