さすけねぇ福島、やるべ中小企業
東北の中心都市仙台を擁する宮城同友会は1000社余りの会員を有するが、うち気仙沼、石巻,仙台市沿岸地域を中心に540社以上が直接的な被害を受けた。3.11の被災当日には、早々に会内に災害対策本部を立ち上げ、被災5日後の3月15日からは連日のようにFAXで「災害対策本部ニュース」を会員向けに送り続けた。
VOL1・1号の見出しは「みんなでお互いに励ましあいながら復興に全力を尽くしましょう」と訴えており、VOL1・2号では「このような方はぜひご一報ください」として、「①これからのインフラ復旧に伴い、操業再開に当たって資金の調達、事務所の手配などでお困りの方」「②生活物資、水などでお困りの方。全国の同友会からの救援物資が、宮城同友会事務局あてに輸送され始めておりますので、必要なものを必要な方にお届けしたいと考えております」との実際的実務的な告知が掲載されている。
さらに3月19日発行のVOL1・5号には「今こそ会員同士が励ましあい、一致団結し復興に向けて全力を尽くしましょう!」と、「仲間内の連帯」を訴える同友会らしい文言が掲載されていた。
もっともその後のたくさんの宮城同友会発の通信文の中から、記者は「社員を解雇するな。われわれが応援するから。(今後のことは)相談しあおう」という、本稿執筆の契機となったサッポロビール髙島英也社長から聞いた言葉と完全に一致する文言を見つけることはできなかった。
同じ被災地ながら、マグニチュード9の大地震に続く巨大津波の後、東京電力福島第1原子力発電所の第1から第4号機までの発電機の炉心溶融(メルトダウン)あるいは水素爆発という未曾有の事故に見舞われた福島同友会の場合はどうだったか。
福島同友会は宮城同友会をしのぐ2000人近い会員を有するが、たまたまこの日、幹部のほとんどが出張中だったこともあり、まず福島や郡山など下部の地区ごとに地区会長名で「会員の皆さん、各自の事業復興に全力を尽くしましょう」などといった常識的な内容のFAXを、間を置かず会員向けに発信することになった。
その後、電話、FAXが通じづらいこともあり、同友会独自のインターネット上の組織活動支援システム「e.doyu(イードーユー)」を会員向けの情報発信ツールとして活用し、情報告知が続けられることになった。
福島同友会のなかでも津波の被害が甚大で、東京電力福島第1原子力発電所の炉心溶融、水素爆発の影響が強く懸念されていた相双地区(相馬市・相馬郡・南相馬市・双葉郡)の場合、事務局名で「各自の人命の確保、安全の確認、生活の確保」と、何はともあれ重視すべき生命をはじめ個々人の大事にすべきことを先に挙げ、最後に「事業復興に全力を尽くして下さい」との文言が送信された。
安孫子健一理事長(現・顧問、建設相互測地社社長)ら福島同友会幹部が郡山市の本部に集まることができたのは、震災4日目の14日。安孫子氏らは状況確認を進める一方、東日本大震災対策本部を設置、「今こそ会員同士が励ましあい、一致団結し震災復興に全力を尽くしましょう」と呼びかけるFAXを全会員に向けて送った。
その後、福島同友会では、A4用紙1枚の手書きの震災復興ニュース「さすけねぇ福島、やるべ中小企業」を頻繁に発行、バックナンバーをHPに掲載し始めた。「さすけね」は福島弁で「大丈夫だ」の意味だという。
震災復興ニュースには「社員とお客様・取引先を守りぬくことが地域を守ること」という安孫子理事長のメッセージなども掲載されているが、やはり髙島氏が述べたような言葉は見つけられなかった。