中国貿易統計の変化の兆しと人民元の動向

中国の貿易統計は輸出、輸入とも勢いがあり前年比で概ね2桁の伸びがここ最近は継続していました。特に、輸入については5月も前年比で前月を上回る伸びが継続しましたが、輸出の勢いは低下しました。中国は新型コロナウイルスの感染収束が比較的早かったことなどから貿易は活況でしたが、輸出などには変化の兆しも見られます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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中国貿易統計:5月は輸入は伸びを加速させるも、輸出の勢いは低下

中国税関総署が2021年6月7日に発表した5月の中国貿易収支は455.3億ドルと市場予想の507.5億ドルを下回りました。内訳は輸出が前年比27.9%増と市場予想(32.1%増)、前月(32.3%)を下回りました(図表1参照)。一方、輸入は51.1%増とほぼ市場予想(53.5%増)通りの高い伸びで、前月(43.1%)を上回りました。

 

月次、期間:2016年5月~2021年6月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国貿易統計(ドル建、輸出と輸入)の推移 月次、期間:2016年5月~2021年6月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

輸出の弱さはコロナ関連特需(マスク・医療関連)が勢いを失い全体を押し下げました。しかし、非コロナ関連財は海外経済の回復を背景に回復基調を続けています。

どこに注目すべきか:中国貿易統計、輸出、マスク、輸入、人民元

中国の貿易統計は輸出、輸入とも勢いがあり前年比で概ね2桁の伸びがここ最近は継続していました。特に、輸入については5月も前年比で前月を上回る伸びが継続しましたが、輸出の勢いは低下しました。中国は新型コロナウイルスの感染収束が比較的早かったことなどから貿易は活況でしたが、輸出などには変化の兆しも見られます。

 

まず、依然高水準ながら、輸出が伸び悩んだ背景を振り返ります。輸出項目で前年に比べ大きく減少したのはマスクなど医療関連のコロナ特需関連項目で、4割近い減少となっています。日本でもドラッグストアなどで中国製と書かれたマスクは山のように積まれています。海外でも(中国製に限りませんが)マスク需要は高かったと見られます。しかしイスラエルや米国のようにワクチン接種が進んだ国ではマスクの着用義務が緩和されています。日本では当面マスク需要は見込めるでしょうが、今後も爆発的な需要が続く可能性は低いと思われます。

 

また、パソコンなどリモートオフィス製品への輸出需要なども5月は落ち込みが見られました。

 

もっとも、これらの要因で市場予想を下回ったとはいえ、中国の輸出全体を見れば、高水準の伸びは維持しています。欧米で経済再開が進む中、衣類や玩具など中国製品全般に対する需要は底堅く推移しているからです。

 

恐らく問題は輸入の伸びと思われます。輸入の伸びは旺盛な中国の内需を反映したと言う側面はあると思われます。しかし、中国の4月の小売売上高は高水準ながら市場予想を下回っています。内需が強いとはいいがたいと思われます。むしろ、問題は資源価格の上昇などを反映した輸入物価の上昇と見られます。6月9日には中国の5月の生産者物価指数が公表予定です。4月は前年比6.8%でしたが、5月分の市場予想は8.5%と警戒的水準が見込まれています。

 

中国当局が輸入インフレを恐れて人民元高誘導する、といった思惑が正しいかどうかはわかりませんが人民元高傾向が見られました(図表2参照)。もっとも、中国債券(主に国債と国有政策銀行債)に対する海外からの投資など人民元を買う要因は様々です。

 

日次、期間2020年6月8日~2021年6月7日、10年国債利回り 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国人民元(対ドル)と中国国債利回りの推移 日次、期間2020年6月8日~2021年6月7日、10年国債利回り
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

そうした中、中国当局(人民銀行)の通貨に対する最近のスタンスを確認します。まず、先月末、中国当局は現行の通貨管理制度を維持する姿勢を表明しています。市場の一部にある制度変更の思惑は否定された格好で、ドルやユーロなど複数の通貨で構成された通貨バスケットと人民元の連動を基本とする政策運営は維持する模様です。

 

一方で、5月31日には人民銀は外貨対象の預金準備率を5%から7%に引き上げました。引き上げは2007年以来で、人民元上昇をけん制したと見られます。もっともこの程度の対応では大幅な元安に転じるとは考えにくいことから、当局が力ずくで人民元安にするよりは、けん制の意味合いが大きいと思われます。輸出への悪影響に配慮して、急激な人民元高には何らかの対応をとる姿勢を当局は続けるのかもしれません。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国貿易統計の変化の兆しと人民元の動向』を参照)。

 

(2021年6月8日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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