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ブラジルインフレ率:5月のインフレ率は市場予想を上回る大幅な伸びに
ブラジル地理統計資料院(IBGE)が2021年6月9日に発表した5月の拡大消費者物価指数(IPCA)は前年同月比で8.06%と、市場予想(7.93%)、前月(6.76%)を上回りました(図表1参照)。
なお、ブラジル中央銀行は6月16日(日本時間17日早朝)に金融政策会合の決定を公表することが予定されています。ブラジル中銀は3月と5月の会合で政策金利を0.75%引き上げ3.5%としました(図表2参照)。インフレ率の上昇傾向が続いていることから、市場では次回会合において再度の利上げが予想されています。
どこに注目すべきか:IPCA、インフレ目標、レアル、利上げ、財政
ヘッドライン21年4月27日号『ブラジルレアル改善の鍵は持続性では?』でブラジルレアル上昇の要因として新型コロナウイルスの新規感染者数動向、政策金利引き上げ、財政規律のギリギリながらの確保等をあげています。新型コロナの感染動向は横ばいですが、利上げや財政規律の確保は、足元のレアルの上昇要因と見られます。ただ、インフレ率は上昇しており、改めて政策の持続性がかぎとなりそうです。
まず、気になるブラジルのインフレ率上昇の背景を振り返ります。主な背景は過去のレアル安の影響で輸入に依存する電化製品や、燃料価格上昇に伴う交通関連項目、並びに電力価格の上昇によると見られます。
なお、ブラジル中銀のインフレ目標は21年が3.75%で上限は5.25%です。8%を超えたインフレ率は看過できる水準とは考えにくく、当面の引締め姿勢が想定されます。
しかし、インフレ率の上昇要因は概ね一過性の要因と見られます。ブラジル中銀が予想する、来年のインフレ率3%台への低下は、条件付ながら、妥当な線と思われます。
このようなインフレ率の動向をもとに、レアルの今後の動向を考えます。
プラス要因はインフレ率上昇の抑制と通貨安抑制を念頭にした金融政策運営です。金利が高くなれば、インカムゲインを目指した資本フローの流入も考えられます。
財政規律がギリギリ確保されたこともプラスです。昨年後半レアルが軟調であったのは、新型コロナ対策の失敗をばら撒き政策で乗り切ろうとした財政拡大政策が主な背景と見られます。財政悪化は抑制されただけで、改善に程遠い状況です(図表3参照)。レアルも足元戻ったとはいえ、新型コロナ前の水準には戻っておらず、メキシコやチリなど他の南米通貨に遅れをとっています。
経常収支や、外貨準備高など対外ポジションがそれほど悪化していないことは、下支え要因程度にはなりそうです。
引締め的な金融政策や、財政規律が維持されるという条件付ながらレアルに改善傾向は見られます。しかし、新型コロナの動向は不透明で、来年とはいえ大統領選挙を控え、政治がいつ不安定になるか読めないなど、懸念要因も山積みです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジルインフレ率に見る、レアルの今後』を参照)。
(2021年6月10日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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