ヘッドライン21年4月27日号『ブラジルレアル改善の鍵は持続性では?』でブラジルレアル上昇の要因として新型コロナウイルスの新規感染者数動向、政策金利引き上げ、財政規律のギリギリながらの確保等をあげています。新型コロナの感染動向は横ばいですが、利上げや財政規律の確保は、足元のレアルの上昇要因と見られます。ただ、インフレ率は上昇しており、改めて政策の持続性がかぎとなりそうです。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

>>>12/10(火)LIVE配信

ブラジルインフレ率:5月のインフレ率は市場予想を上回る大幅な伸びに

ブラジル地理統計資料院(IBGE)が2021年6月9日に発表した5月の拡大消費者物価指数(IPCA)は前年同月比で8.06%と、市場予想(7.93%)、前月(6.76%)を上回りました(図表1参照)。

 

月次、期間:2016年5月~2021年5月、前年同月比と前月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジルのインフレ率(IPCA)の推移 月次、期間:2016年5月~2021年5月、前年同月比と前月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、ブラジル中央銀行は6月16日(日本時間17日早朝)に金融政策会合の決定を公表することが予定されています。ブラジル中銀は3月と5月の会合で政策金利を0.75%引き上げ3.5%としました(図表2参照)。インフレ率の上昇傾向が続いていることから、市場では次回会合において再度の利上げが予想されています。

 

日次、期間:2020年6月9日~2021年6月9日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジルの政策金利とレアル(対ドル)レートの推移 日次、期間:2020年6月9日~2021年6月9日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:IPCA、インフレ目標、レアル、利上げ、財政

ヘッドライン21年4月27日号『ブラジルレアル改善の鍵は持続性では?』でブラジルレアル上昇の要因として新型コロナウイルスの新規感染者数動向、政策金利引き上げ、財政規律のギリギリながらの確保等をあげています。新型コロナの感染動向は横ばいですが、利上げや財政規律の確保は、足元のレアルの上昇要因と見られます。ただ、インフレ率は上昇しており、改めて政策の持続性がかぎとなりそうです。

 

まず、気になるブラジルのインフレ率上昇の背景を振り返ります。主な背景は過去のレアル安の影響で輸入に依存する電化製品や、燃料価格上昇に伴う交通関連項目、並びに電力価格の上昇によると見られます。

 

なお、ブラジル中銀のインフレ目標は21年が3.75%で上限は5.25%です。8%を超えたインフレ率は看過できる水準とは考えにくく、当面の引締め姿勢が想定されます。

 

しかし、インフレ率の上昇要因は概ね一過性の要因と見られます。ブラジル中銀が予想する、来年のインフレ率3%台への低下は、条件付ながら、妥当な線と思われます。

 

このようなインフレ率の動向をもとに、レアルの今後の動向を考えます。

 

プラス要因はインフレ率上昇の抑制と通貨安抑制を念頭にした金融政策運営です。金利が高くなれば、インカムゲインを目指した資本フローの流入も考えられます。

 

財政規律がギリギリ確保されたこともプラスです。昨年後半レアルが軟調であったのは、新型コロナ対策の失敗をばら撒き政策で乗り切ろうとした財政拡大政策が主な背景と見られます。財政悪化は抑制されただけで、改善に程遠い状況です(図表3参照)。レアルも足元戻ったとはいえ、新型コロナ前の水準には戻っておらず、メキシコやチリなど他の南米通貨に遅れをとっています。

 

月次、期間:2014年4月~2021年4月、ブラジルは共に月次で公表 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表3]公的債務残高対GDP(国内総生産)比率と経常収支 月次、期間:2014年4月~2021年4月、ブラジルは共に月次で公表
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

経常収支や、外貨準備高など対外ポジションがそれほど悪化していないことは、下支え要因程度にはなりそうです。

 

引締め的な金融政策や、財政規律が維持されるという条件付ながらレアルに改善傾向は見られます。しかし、新型コロナの動向は不透明で、来年とはいえ大統領選挙を控え、政治がいつ不安定になるか読めないなど、懸念要因も山積みです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジルインフレ率に見る、レアルの今後』を参照)。

 

(2021年6月10日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント

 

【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」

 

【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由

 

【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧