住宅価格が世界中で高騰 金融政策への影響は?

緩和的な金融政策や大規模な財政支出、アフターコロナにおける住宅需要の高まりや木材不足によるコスト高などによって、住宅価格が世界的に急騰する現象が広がっている。このまま住宅市場の過熱感が高まった場合、世界の中央銀行は現在の緩和的な金融政策を変更するのだろうか?

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グローバルに住宅価格が高騰

2021年1-3月期の主要国の住宅価格は大きく上昇した。前年同期との比較ではコロナショックによるベース効果があるとは言え、ニュージーランド(NZ)は前年同期比+22.4%、米国は同+10.3%、ドイツは同+9.6%、そして日本でも同+9.3%と大幅な伸び率となった。また、前期との比較でも、NZは前期比+10.0%、米国は同+2.4%、ドイツは同+2.1%、日本も同+1.9%となった(図表1)。

 

四半期、現地通貨建て、2021年1-3月期時点 出所:グローバルプロパティガイドのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]主要国の住宅価格変化率(インフレ調整後) 四半期、現地通貨建て、2021年1-3月期時点
出所:グローバルプロパティガイドのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

これはアフターコロナにおける一過性の現象とは言い切れない。主要国の住宅価格は年々上昇しており、NZは過去10年間でインフレ調整後の住宅価格が約2倍になったほか、ドイツも同期間で約8割上昇しているからだ(図表2)。

 

四半期、現地通貨建て、2011年1-3月期=100で指数化 期間:2011年1-3月期~2021年1-3月期<br>出所:グローバルプロパティガイドのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]主要国の住宅価格推移(インフレ調整後) 四半期、現地通貨建て、2011年1-3月期=100で指数化
期間:2011年1-3月期~2021年1-3月期
出所:グローバルプロパティガイドのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

ここで興味深いのは、金利水準や物価水準、地理的要素などが異なる国々で、住宅価格が一様に上昇していることだ。住宅価格がグローバルに連動して上昇していることを考慮すれば、主要中銀による緩和マネーが世界的な住宅価格高騰の主因とも捉えられる。

 

住宅価格高騰による弊害はすでに起きている。OECD(経済協力開発機構)によれば、名目住宅価格を1人当たり名目可処分所得で割った(住宅取得の容易さを示す)指標は日本を除いて世界的に悪化傾向にあり、特に若者にとって住宅を取得するハードルはますます高くなっている(図表3)。

 

四半期、2015年=100で指数化、期間:2011年1-3月期~2020年10- 12月期(ニュージーランドは2020年7-9月期まで) 出所:OECDのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]主要国の名目住宅価格÷1人当たり名目可処分所得の推移 四半期、2015年=100で指数化、期間:2011年1-3月期~2020年10-12月期(ニュージーランドは2020年7-9月期まで)
出所:OECDのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

住宅価格の安定は中央銀行の金融政策目標ではない

住宅価格の上昇が著しいNZでは、同国政府がNZ中銀の金融政策に対して持続可能な住宅価格に配慮することを今年3月から新たに求めた。しかし、その後に開催された金融政策決定会合では(住宅価格高騰を理由とした)利上げは行われず、様子見スタンスを堅持したことから、依然として政府との温度差があることが浮き彫りになった。

 

カナダ中銀こそ、4月21日にテーパリング(国債購入の減額)を決めた際、住宅価格の高騰に付随する潜在的リスクについて引き続き監視するとの文言を声明文に加えたが、NZ中銀をはじめとした(カナダ中銀以外の)主要中銀は、住宅市場から一定の距離を保っている。

 

大多数の個人にとって住宅は一生に一度の大きな買い物であり、中銀が物価をコントロールするうえで重視する日常的な「消費財」には一般的に分類されない。そのため、住宅価格が高騰しても(米国の場合は家賃が上昇しないかぎり)、中銀の金融政策ではあまり重視されない傾向にある。そうなれば、政府による住宅価格抑制策に頼らざるを得なくなるが、コロナショックからの経済回復を最優先したい政府にとって、そのような政策がはたしてどこまで魅力的に映るだろうか。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『住宅価格が世界中で高騰 金融政策への影響は?』を参照)。

 

(2021年6月7日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

ストラテジスト

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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