一家の大黒柱を失ったとき、遺族の生活を支える「遺族年金」があります。しかし支給要件があり、故人が自営業者の場合は原則として18歳未満の子がいる場合しかもらうことができません。一方、夫を亡くした妻で遺族年金をもらえない人に対しては「寡婦年金」が支給されます。今回は、「寡婦年金」の支給要件と支給額、支給を受けるための手続きなどを見ていきます。

そもそも「寡婦年金」とは?

※画像はイメージです/PIXTA
※画像はイメージです/PIXTA

 

死亡した夫がサラリーマンであった場合は妻に遺族年金が支給されます。

 

しかし、自営業者であった場合は原則として18歳未満(正確には18歳になって最初の年度末まで)の子がいる場合しか支給されません。残された妻は、自身の老齢年金が支給されるようになるまで収入が途絶える可能性があります。

 

また、夫が死亡するまでに自身の老齢年金または障害年金をもらっていなければ、生前に納めた国民年金保険料が掛け捨てになってしまいます。

 

寡婦年金は、遺族年金をもらえない妻に対して、死亡した夫がもらえるはずであった老齢年金の一部が支給されるものです。妻の収入を保障する一方、夫の年金保険料が掛け捨てになることを防いでいます。遺族年金がもらえる場合は寡婦年金をもらうことができません。

 

■寡婦年金の支給要件

寡婦年金の支給を受けるためには、死亡した夫と残された妻が以下の要件をすべて満たしていることが必要です。

 

[寡婦年金の支給要件]

●死亡した夫の要件

・国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間が10年以上あった(免除期間も含む。平成29年7月までに死亡した場合は25年以上)

・老齢基礎年金をもらったことがない、または障害基礎年金をもらえるようになったことがない

 

●残された妻の要件

・夫が死亡した時点で65歳未満であった

・夫によって生計を維持されていた

・結婚の期間が10年以上続いていた(内縁・事実婚でも可)

・老齢基礎年金の繰り上げ支給を受けていない

 

■寡婦年金の支給期間

寡婦年金が支給される期間は、妻が60歳になってから65歳になるまでの間です。

 

妻が60歳になる前に夫が死亡した場合は、60歳になるまで寡婦年金は支給されません(図表例1)。妻が60歳を過ぎて65歳になるまでの間に夫が死亡した場合は、そこから65歳になるまでの間だけ支給されます(図表例2)。

 

[図表]寡婦年金の支給期間

 

■寡婦年金の支給額

寡婦年金の支給額は、夫が65歳からもらえるはずであった老齢基礎年金の4分の3です。正確には、夫の国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間に応じて計算した老齢基礎年金の4分の3となります。

 

たとえば、死亡した夫の国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間が30年あったときの寡婦年金の金額は以下のとおりになります。

 

[寡婦年金の支給額例]

死亡した夫は自営業者(国民年金の第1号被保険者)で、保険料納付済期間は30年でした。このときに妻がもらえる寡婦年金の金額を求めます。

 

(遺族年金の支給はなく、その他の寡婦年金の支給要件も満たしているものとします)平成31年4月以降の国民年金の老齢基礎年金の満額(保険料納付済期間40年の場合)は780,100円ですが、実際には保険料納付済期間に応じた金額が支給されます。夫がもらえるはずであった老齢基礎年金:780,100円×30年÷40年=585,075円

 

寡婦年金の支給額は、夫がもらえるはずであった老齢基礎年金の4分の3の金額となります。

 

寡婦年金:585,075円×3/4=438,806円(円未満は四捨五入)

 

妻は60歳から65歳になるまでの間、寡婦年金として毎年約44万円をもらうことができます。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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