一家の大黒柱を失ったとき、遺族の生活を支える「遺族年金」があります。しかし支給要件があり、故人が自営業者の場合は原則として18歳未満の子がいる場合しかもらうことができません。一方、夫を亡くした妻で遺族年金をもらえない人に対しては「寡婦年金」が支給されます。今回は、「寡婦年金」の支給要件と支給額、支給を受けるための手続きなどを見ていきます。

「寡婦年金の支給」を受けるための手続き

寡婦年金の支給を受けるためには、残された妻が自分で申請をしなければなりません。申請は死亡した夫の住所の市区町村役場で行いますが、年金事務所または街角の年金相談センターでも手続きができます。

 

申請に必要な書類等は次のとおりです(死亡の原因が交通事故など第三者の行為による場合は別途書類が必要です)。

 

[寡婦年金申請手続き書類等]

・寡婦年金の年金請求書

・夫の年金手帳

・戸籍謄本(発行から6ヵ月以内のもの)

・世帯全員の住民票の写し

・夫の住民票除票の写し(世帯全員の住民票の写しに含まれる場合は不要)

・妻の所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など収入が確認できる書類

・受け取りを希望する預金口座の通帳など

・他の公的年金で年金をもらっている場合は年金証書

・印鑑(認め印でもよい)

 

申請の期限は死亡日の翌日から5年以内とされていますが、できるだけ早く手続きすることをおすすめします。

死亡一時金の支給要件も満たす場合はどちらかを選択

自営業者など国民年金の第1号被保険者が死亡したときの給付には、寡婦年金のほか死亡一時金もあります。死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者が老齢基礎年金や障害基礎年金をもらわないまま死亡した場合に一度だけ支給されます。

 

夫が死亡して残された妻が寡婦年金と死亡一時金の両方の支給要件を満たす場合は、どちらか一方を選択して支給を受けることになります。

 

死亡一時金は支給が一度だけで、支給額は最大でも32万円にとどまります。そのため、多くの場合は寡婦年金をもらうほうが有利になります。

 

ただし、次のような事情で寡婦年金がもらえない場合は、死亡一時金をもらうことができます。

 

・妻が老齢基礎年金の繰り上げ支給を受ける場合

・妻が特別支給の老齢厚生年金(60歳代前半の老齢厚生年金)をもらう場合

・夫に厚生年金の加入期間があって妻が遺族厚生年金をもらう場合

 

寡婦年金と死亡一時金のどちらの支給を受けるかは、いつからもらえるかによって判断することもできます。

 

夫が死亡した時点で妻が45歳であった場合は、寡婦年金がもらえるようになるまで15年待つ必要がありますが、死亡一時金はすぐにもらうことができます。

 

[参考:死亡一時金の支給要件と支給額]

・支給要件:死亡した人の第1号被保険者としての保険料納付済期間(一部免除の期間も含む)が36ヵ月以上

・支給を受けられる人と順位 :(1)配偶者、(2)子、(3)父母、(4)孫、(5)祖父母、(6)兄弟姉妹。死亡した人と生計が同じであれば、生計を維持されていなくても支給される。ただし、遺族基礎年金をもらえる遺族がいるときは支給されない

・支給金額:死亡した人の保険料納付済期間に応じて12~32万円。付加保険料を36ヵ月以上納めていた場合は一律8,500円加算

・申請の期限:死亡日の翌日から2年以内

必要書類の収集は専門家に依頼することもできる

ここまで、寡婦年金の支給要件と支給額、支給を受けるための手続きをご紹介しました。

 

手続き自体はそれほど難しくありませんが、戸籍や住民票などが必要なので、日中お時間が取りずらい方などは手間に感じられるかもしれません。

 

そのような時は、戸籍等の収集を専門家に依頼することも可能です。

 

司法書士であれば、故人が持っていた不動産の名義変更や銀行口座の名義変更・解約も併せて任せられるため、忙しい方やあまり外出できない方にはおすすめです。

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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