結婚のときに姓を変えた人が配偶者の死亡後に旧姓に戻すための手続き「復氏届」。姓を戻したい、とだけ考えて手続きを行うと、思ってもいなかったトラブルに発展することも。今回は復氏届の提出方法と提出する場合の注意点などを見ていきます。なお結婚したときは夫か妻のどちらかの姓を名乗ることになっていますが、本記事では夫の死亡後に妻が旧姓に戻すことを前提に考えていきます。

「復氏届」で旧姓に戻す手続き

心機一転(※画像はイメージです/PIXTA)
心機一転(※画像はイメージです/PIXTA)

 

復氏届は、本籍地または住所地の役所に用紙を提出するだけで手続きができます。提出すると旧姓に戻るだけでなく、戸籍も亡くなった夫とは別々になります。一方、遺産相続や遺族年金で不利になることはありません。

 

■復氏届は本籍地または住所地の役所に提出

復氏届は、夫が死亡して残された妻が、自身の本籍地または住所地の役所に提出します。夫の死亡届を提出した後であればいつでも提出でき、期限はありません。夫の親族の同意や家庭裁判所の許可などは必要なく、自分の意思だけで提出することができます。

 

【復氏届の提出方法】

・届出人:亡くなった人の配偶者

・提出先:届出人の本籍地または住所地の市区町村役場

・手数料:なし

・必要書類:復氏届、戸籍謄本(本籍地以外で届け出る場合に必要)、印鑑(認印でもよいがスタンプ印(シャチハタ)は避ける)

・提出期限:配偶者の死亡届を提出した後であればいつでもよい(死亡した配偶者が外国人であれば3ヵ月を過ぎると家庭裁判所の許可が必要)

 

出所:札幌市役所ホームページに掲載の様式をもとに作成 ※用紙は提出先の市区町村役場の窓口で入手できます
[図表1]復氏届の記入例 出所:札幌市役所ホームページに掲載の様式をもとに作成
※用紙は提出先の市区町村役場の窓口で入手できます

 

■結婚前の戸籍に戻るか新しい戸籍を作るかを選択

復氏した後に入る戸籍は、結婚前のもとの戸籍に戻るか新しい戸籍を作るかの選択になります(図表2)。どちらか一方を選んで復氏届用紙の「復氏した後の本籍」の欄に記入(チェック)します。

 

[図表2]復氏届と戸籍

 

ただし、次のような場合は新しく戸籍を作ることしかできません。

 

・結婚前のもとの戸籍に誰も残っていない場合

・子供を同じ戸籍に入れたい場合

 

両親が死亡して兄弟姉妹が全員結婚(または死亡)した場合は、戸籍から誰もいなくなってしまいます。構成員が誰も残っていない戸籍は戸籍そのものが除籍されるため、復氏してその戸籍に戻ることはできません。

 

また、子供を同じ戸籍に入れたい場合も新しく戸籍を作る必要があります。

 

戸籍は一組の夫婦と未婚の子供で構成することとされていて、祖父母・親・子供のように三代にわたる構成は認められません(子供を同じ戸籍に入れるには別途手続きが必要です)。

 

■戸籍から婚姻歴が消えるわけではない

復氏届を提出すると、妻は入っていた戸籍(亡くなった夫の戸籍)から除かれます。除かれるといっても戸籍の記載が消されるわけではなく、戸籍から除かれたことが記載されます。

 

もとの戸籍に戻った場合も新しい戸籍を作った場合も、復氏届で旧姓に戻した後の戸籍には亡くなった夫の戸籍から移ってきたことが明記されます。姓をもとに戻したからといって、亡くなった夫との婚姻歴が戸籍から消えるわけではありません。

 

■相続と遺族年金で不利にならない

復氏届を提出して旧姓に戻っても、妻は亡くなった夫の遺族であり相続人であることには変わりありません。したがって、夫の遺産を相続することができ、相続した遺産を返す必要もありません。

 

遺族年金をもらう権利もそのまま継続し、復氏届の提出が原因で遺族年金の支給が打ち切られることはありません。

 

夫が残した借金を引き継ぎたくない場合は、死亡から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄を申し立てる必要があります。復氏届を提出しただけでは相続を放棄したことにはならないため注意しましょう。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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