Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

「貨幣としてのアート」が意味すること

バンクシーには、自らが監督した映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』がありますが、実に面白い内容です。現代アートの本当の芸術的価値はどこにあるのかという問いを巡り、名声と価格の問題について、一人のにわかアーティストの成り上がりを通してみるという物語です。

 

アートになんの知識もない映画の主人公ティエリーが、バンクシーの演出によって、ミスター・ブレイン・ウォッシュという名前のアーティストになっていくという現代アート界の成功を戯画化したような作品で、芸術と資本主義の本質を突く物語展開は流石にうまいものがあります。

 

またバッドジョークは天才的で、バンクシーが監修した本当にあったディストピアなテーマパーク「ディズマランド」では、17カ国約50人のアーティストが参加した異色の展示で、移民で溢れたボートや無政府主義者たちの訓練キャンプなどからなる世界一憂鬱になるテーマパークで、大いに話題になりました。ともすれば絶望的な今日の社会情勢を問題提起しながらエンターテインメントにしていくクリエイティブはさすがです。

 

権力者たちと切っても切れない関係

 

資本主義ときわめて親和性の高いアート・ビジネスの中で、資本主義を批判するアーティストもいれば、それを利用して自らをプロデュースしながら価値を高めていくアーティストもいます。すでに一世紀も前にマルセル・デュシャンは、このように叫んでいました。

 

「我々には貨幣に代わるものがたくさんある。貨幣としての金、貨幣としてのプラチナ、そして今や貨幣としてのアートだ」

 

実際に超売れっ子のアーティストの中には、自分を〝造幣局〟と冗談交じりで呼ぶ人もいます。確かに社会的な〝幻想〟という意味では、アートと貨幣は似ています。アートが作家の芸術的創意を結晶化させたものであることは間違いありませんが、一方ではグローバルな金融商品であることも事実です。

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